計算気象予報士の「知のテーパ」

旧名の「こんなの解けるかーっ!?」から改名しました。

物理の授業で何を学ぶか? 数学と物理と「モデル」の関係

2012年09月07日 | お天気のあれこれ

局地気象のシミュレーションで格闘中・・・解析手法に悩み、苦しみ悶えている・・・(笑)


 これまでの人生を振り返って、「数学は得意だけど、物理は苦手」と言う人には多く出会ってきましたが、「物理は得意だけど、数学は苦手」と言う人は・・・正直、会ったことがありません。むしろ、物理が得意な人は数学も得意(もしくは好き)と言う人ばかりだった・・・と思います。

 一見、似た者同士のこの両者の違いはどこにあるのか・・・ふと、考えてみたことがあります。大学の理学部以上で学ぶ、または研究する数学や物理学の事はわかりませんが、高校生~大学教養レベルに限定して言えば、 「数学」は(既にある)公式や定理を縦横無尽に使いこなす事が求められるのに対して、 「物理」は(既にある)基本的な法則や公式を縦横無尽に使いこなして、新たな公式や方程式を組み立てる事が求められます。「物理」の問題は公式や方程式を組み立ててしまえば、後は「数学」の問題に帰着されるのです。つまり、両者の差は(問題として)与えられた現象について、新たな公式や方程式を「組み立てる」事にあるのではないか、と思えるのです。

 物理の問題は、基本的な物理現象を幾つも組み合わせた現象をテーマに出題されるため、どのような基本的な現象が、どのように組み合わされているのかを理解し、認識した上で、それぞれの基本現象の公式を組み合わせて、出題されている現象に見合った方程式を構築する・・・と言う高度な(ある意味、面倒臭い)プロセスを経る必要があります。なるほどこの部分に苦手意識を持つ・・・と言う事でしょうか。その一方で、まさにこのプロセスこそが「醍醐味」と感じる人もいるわけですね。

 物理の教科書を開くと公式の数も膨大です。これを全部、暗記するのは・・・無理だよなあ・・・と尻込みしてしまうケースも少なくありません。しかし、我が身を振り返ってみると、自分が使っている公式は・・・実はその膨大な中のごく一部に過ぎない事に気づきます。必要最小限の公式を覚えておけば、後は必要に応じて、その都度「公式」を組み立てる事が出来るからです。多くの物理の先生が、公式を覚えるのではなく、その公式がどのような法則や考え方から導かれるかを学ぶ事の重要性を指摘されています。

 結局、基本的な法則や公式に則って、どのように現象を理解し認識してゆけば良いのか ・・・その「思考法=ものの見方・考え方」を学ぶことがすなわち「物理」の勉強なのだ、と今更ながら実感しています。そして、現象やその構造・メカニズムに対する「自分なりの理解や認識」を具現化(表現)したものが「(解析)モデル」なのです。「物理の問題を解く」と言うことはすなわち、対象となる現象を「解析モデル」の形で表現し、考える事に他なりません。

 これまで学んできた機械工学も、バイオメカニクスも、エレクトロニクスも、建設・土木工学も、そして気象学も・・・対象とする現象や応用する分野は異なりますが、その対象となる現象を物理学の法則に照らし合わせて、その本質をモデル化し、数学と言う言語を用いて表現し、後はそれらをどのように応用していくか・・・につながっていくものです。

 現在、私が挑んでいる分野も複雑な局地気象のメカニズムやその構造を一旦「簡単な模型のイメージ」に落とし込んでから、物理学の法則に照らし合わせて、その本質をモデル化し、方程式や拘束条件を構築し、これをコンピューターで計算するというもの。または、局地気象のファンクション(機能)だけに着目し、これを「簡単な計算式」で表現して、コンピューターで計算するというもの。

 「効果的な質問を投げかけることで、相手の思考を促す事が出来る」とは、先日のコーチングの研修で学んだ事。

 複雑な現象を「簡単な模型のイメージ」に落とし込む際は、一つ一つの特徴についてこの本質は何なのか、それはどのように解釈・理解・表現すればよいのか、絶えず(無意識の内に)自らに問いかけています。結局は、目の前の現象やその本質を「どのように理解したか?」と言う究極の問いかけに対して、「自分なりの考え方」を構築し「自分なりの答え」を導き出そうとする営みなのです。

 質問力・・・鍛えないと・・・だな・・・。

コメント
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