◎稲生物怪録
(2021-06-03)
稲生物怪録は、江戸時代、広島県三次市を舞台に、様々な妖怪が次々と登場し、16歳の稲生平太郎が、妖怪軍団をついに打ち破るというもの。これは内容が奇抜でバリエーションに富んでいることから、最近では、モバゲーのモンスターとして頻繁に登場している他、平田篤胤、泉鏡花、稲垣足穂、折口信夫、荒俣宏、京極夏彦らに採り上げられている。
だが、実際に稲生物怪録を読んで見ると、稲生平太郎と家族、親戚、近所の人が盛んに怪異に悩まされるが、稲生平太郎は、騙されずに正体を見破り続けたところ、特に物の怪側に攻撃をしたわけでもないのに、物の怪側が敗北のしるしとして木槌を平太郎に渡し、いづこともなく去っていったという、カタルシスという点では物足りない物語に仕上がっている。
クンダリーニ・ヨーギは大体エクソシズムの心得はあるものだが、日本の有名エクソシストと言えば、出口王仁三郎と本山博。本山博の著作を読むと各地で浮かばれない霊をどこかに逐うのでなく言い聞かせ、解脱させている。出口王仁三郎も無数の不成仏霊を言向け和し、改心させているが、中には苦労させられる手合いもあった。
出口王仁三郎の、稲生平太郎への言及は筑波山の一箇所のみであって、多くを語ってはいない。マントラにしても作法にしても、悟っていない人物が使えば良い結果にならないことを知っていたせいだろう。
カルロス・カスタネダのシリーズでも、霊界のどこかに何百年も取り込められている人を見かけるシーンがあったりするのだが、普通の人は、そういうものに関心を持つことは百害あって一利なし。
釈迦でもイエスでも大悟の直前に悪魔が登場する。稲生平太郎のケースでは、沢山の悪霊が登場して最後の魔王との対面の際、冠装束をした人の半身(昔の一万円札の聖徳太子みたいな)が稲生平太郎の背後に見え、平太郎自身は彼を守る氏神だろうと認識した。
だがこの際に稲生平太郎は、大悟したのではないか。ダンテス・ダイジのニルヴァーナのプロセスとテクニックでは、クンダリーニ覚醒時に1~3人の神霊がやってきて一人が本人の頭の封印を切る、とある。氏神と見えたそれが、そうだったのではないだろうか。
大悟して初めてイエスも釈迦も平太郎も悪魔を超えられたのだ。