◎怒りの水銀、神の水銀
(2006-12-10)
ヤコブ・ベーメは、1575年生れの北ドイツのゲルリッツの無学な靴職人。
その著作の一つであるシグナトゥーラ・レールムの次の文を読むと、錬金術の述語である水銀、黄金、肉体、キリストなどの用語が、自らの体験を裏付ける表現として用いられていることがわかる。
『(人間は)黙って横たわった。既に形は崩れ、獣のような醜い姿になっていた。とても天使には見えない。ましてや天国に迎え入れられるとは思えない。悪魔の原石のようだ。
そこに含まれた金は、じっと身を潜め、沈黙している。至福の姿は彼にあってなきが如し、目には映らない。肉体は毒の中でまだ生きのびてはいたが、まるで悪臭を放つ死体のようだ。それはまた邪悪の茨の茂みのようでもある。
けれどもそこからは清らかなバラの莟が、いばらを超えて顔をのぞかせ、有毒な怒りの水銀の中で隠れてじっとしていたものが姿をみせる。
造り主である錬金術師が手にとって、死に絶えていたその金に、至福の姿に、生きた水銀を注いでやることによって。
そうして神の優しさと根源的な愛から生れたものが、一時隠されていても、ふたたび莟をもち花開く。神の水銀、すなわち神の言葉によって。それは沈黙していた人間の心にしみ入るのだ・・・・・。
そののち天から授かった水銀は、怒りの水銀をあるべき姿に変え、そしてキリストが誕生する。キリストは悪魔の頭を叩きつぶし、・・・・・そして清く正しい人間がよみがえり、神の前に生きる。(神々しいその姿は)地上の材料に潜んでいた金のように輝き始める。』
(錬金術 心を変える科学/C.ジルクリスト/河出書房新社P99-100から引用)
水銀は最初は有毒であるが、後に神の言葉に変容するところをみると、かの白銀色のエネルギー・コードが神から肉体までを貫いているクンダリーニのアーキテクチャーからすれば、水銀とはクンダリーニのことと意識していた印象を受ける。
生きた水銀である神のバイブレーションを注いでやることによって、クンダリーニは活性化し、神とつながり、キリストとして誕生する。「自分自身がキリストとして誕生する」とは書けないので、誰が成るのだかわからないが、キリストが誕生すると書いたのだろう。