懐かしのバレエ

バレエ、パフォーミングアーツ等の感想、及び、日々雑感。バレエは、少し以前の回顧も。他、政治、社会、競馬、少女マンガ。

トゥルソワの祈り

2019-10-28 02:09:36 | Weblog
フィギュアスケートGPカナダ大会、女子シングルFS。

アレクサンドラ・トゥルソワの「ゲーム・オブ・スローンズ」。

前々から言われてたし、もう既に何割かの人は気づいてるようだけど、この人は、世界最強ジャンパー、というだけの選手ではない。

元々、芸術性や、表現力の類は、その片鱗を見せてはいた。もっと前から、エテリ組のお姉さんたち(メドベージェワとかザギトワとか)よりは、彼女とシェルバコワの方が、芸術大国ロシアの伝統たる、馥郁たる芸術の香りを感じさせる要素はあったと思っていたが。

今日は、それをより強く感じた。

なんていうのか、突き抜けたものを感じる。今までも、何度も手に汗握って見てきた選手だけど、今日は、より深い感銘を受けた。

4回転を複数種類織り込み、4本跳んで、最初のサルコーで高くきれいに回転しながらサクッと転倒したにもかかわらず、全く動じず、その後の超難度技をきれいにビシビシ決めていく様は、神の領域を思わせたが。

最初の祈りの表情、そして、立ち上がって、両腕を天に向けるかのように大きく広げた様。手、腕にも、表情がある。

ベストマッチングの透明感ある歌声に乗って、トゥルソワの駆使する超絶技巧の全てから、或いはその合間の動きや表情も含め、何か世俗離れした、天上的な祈りの世界を感じ続けていた。

写真で見た時は、ネペラメモリアルやジャパンオープンの時の濃いピンクのスカート系の衣装の方が良いように思ったが、試合になると、ブルーの衣装にグレーのタイツ系を合わせた衣装も、合っているように思った。

演技の前に、ヘアスタイルが、いつものお団子だけじゃなく、頭頂部の周りに、編み込みを入れているのが、とてもきれいで、そのせい、というわけでもないけれど、いつも、「可愛い」と思っていた彼女の顔を、今日は、試合中アップで映されると、初めて「美しい」と思った。

演技全体が、神への祈りの様な、異世界。
中段で、涙が出た。

あたかも、神に仕える巫女の奉納の舞のような、何かピュアな別世界。
無垢で、混じりけの無い、不思な時空だった。

驚異の身体能力から繰り出す、次から次への超難度技については、いつもクールな荒川静香解説よりも、目の前の4回転ジャンプらに思わず声を上げた、テレ朝の実況(三上氏だっけ?)の男性の表現の方が、今日は解説的な補い方もあり、よく試合の内容を伝えていたと思った。

日中に、天皇賞でアーモンドアイが勝って、皆、この馬、ほんとに強い!って思ったと思う。
アーモンドアイの圧巻のレースを見て、お腹いっぱいになったかと思ったのに、こんなにトゥルソワの描く世界観に感動できて、良かった。

さらに、もう、今日はトゥルソワ一色かと思ったのに、

その後の男子シングルの羽生結弦の演技を見て、感動して泣けたので、自分にほっとしてたりした。
あの、トゥルソワを観てしまうと、もう、何も見えないかと思った。

羽生は羽生で、トゥルソワはひとりで闘ってる感じだけど、羽生は、周りのファンと一体化した、独特の氷上ワールドで、ニューフェイスのトゥルソワとは全く異質な、栄光とキャリアを持つロングランの選手の、愛されるスターの感動だった。愛され続けることの、難しさ。それを実現している者だけが放つオーラ。

スポーツ紙か何かに、羽生のトゥルソワについてのコメントが出ていて、これこれ、これを見たかったのよね、と思った。
専門的な目のある人の意見。
「彼女らはジャンプにパワーを使っていない。」とかって言っていた。

今日のトゥルソワに、技術的な事で言うと、最初の4回転サルコーの転倒は、前回のジャパンオープンでもちょっとこの種類が今、安定して無くて意地で力技で踏みとどまって成功させていたので、これが今、成功率がむらがあるっぽい。
でも、予定を変えないし、転倒しても、織り込み済みのような表情で、さっさと次を成功させていた。

一番気になるのは、3Aを練習してるような事も言ってなかったかな?3Aなんか、なくてもいいのに。4回転ルッツまでできてるのに。ただでさえ、誰もやってないような、複数種類の4回転を次々に跳ぶプログラムとか、身体に負担のかかりそうな驚異的な技術を駆使してくるので、4回転より難度を落とした3Aなんか、今更練習して、負担がかかりすぎたりしないのかしら?とか、大きなお世話な事を考えてしまった。

本日もまた、観る僥倖。







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