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樋口有介『風の日にララバイ』(新装版)2013・ハルキ文庫-柚木草平シリーズの「原点」の作品らしいです

2024年10月23日 | 樋口有介さんを読む

 2024年10月のブログです

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 樋口有介さんの『風の日にララバイ』(新装版・2013・ハルキ文庫)を久しぶりに読む。

 単行本は、文庫本の解説によると、樋口さんの3冊目に書かれた小説で、樋口さんの有名な柚木草平シリーズより早いが、出版社の都合で柚木草平シリーズより遅れて1990年に刊行され、柚木草平シリーズの「原点」というべき作品らしい。

 確かに、主人公は柚木草平を彷彿させる中年男子であるし、『風の日にララバイ』という題名も、口に出すと少し恥ずかしい気がするほど若々しいが(樋口さん、ごめんなさい)、内容はなかなか素敵だ。

 本の帯には、39歳、子連れ、バツイチ、無職、-ときどき探偵、とあるが、いい味を出している小説だ。

 あらすじは例によって書かないし、探偵小説なので書くのはルール違反と思うので遠慮するが、別れた奥さんが殺され、娘の名誉を守るために真相を探るくたびれた中年男子の物語、というところだ。

 相方に、柚木草平シリーズに出てくる小高直海という小生意気な女の子(直海ちゃん、ごめん)を思い出させる女子大生が登場するなど、樋口さんらしい物語でもある。

 あらすじはなんとなく記憶にあったような気がしたが、読んでみると、だいぶ違っていたし、小説の細かい描写がやはり樋口さんらしくとても素敵で、楽しく読ませてもらった。

 やはりうまい小説家だなあと思う。

 おとなの生きる辛さと哀しさと小さな喜びといったものと若者の元気さや無邪気さなどがうまく書けていると感心する。

 そういえば、小説家は時代を感じるカナリヤみたいな存在だ、と言われるが、ここでも同性愛が出てくる。

 柚木草平シリーズでは面会交流がテーマの一つになっているし、樋口さんは本当にカナリヤちゃんだったのかもしれない(?)。

 何回読んでも読みごたえのあるおとなの作家だなあと改めて思う。

 秋の日にいい時間を過ごさせてもらった。      (2024.10 記)

 


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