2019年のブログです
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加藤周一『夕陽妄語1 1984-1991』(2016・ちくま文庫)を再読。
「夕日妄語」は加藤さんが朝日新聞に月1回、連載をしていた社会時評で、当時、じーじはライヴで毎月、楽しみに読んでいた。
加藤さんは『羊の歌』以来、冷静な社会分析が魅力的だが、「夕陽妄語」でも、その冷静さはすごい。
いろんな事件が起こり、加藤さんの分析に学ぶところが多かったが、その加藤さんが、予想できなかった、少なくともこんなに早くは、と語らせたのが、ベルリンの壁の崩壊。
そういうことを隠さずに正直に書く加藤さんもすごいと思う。
湾岸戦争前夜の加藤さんの筆も冴える。
戦争前、イラクとアメリカの軍事行動がエスカレートする中、それでも戦争までは、戦争だけは避けるのでは?という祈りに似た語りをよそに戦争に突入、加藤さんはアメリカを止められなかった国連のあり方を検証する。
その流れに流されずに、とことん冷静に分析をする姿はやはりすごい。
そして、アメリカ追従の日本を分析し、行く末を懸念し、さまざまなことがらに話が及ぶ姿は、考えることの大切さを伝えてくれる。
読んでいて、勇気をくれる本である。 (2019.3 記)
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2022年春の追記です
ベトナムとイラク、アフガニスタンでの失敗が、今回のウクライナでのアメリカの慎重さにつながっているのかもしれない。
戦争に慎重なことはとてもいいことだと思う。
民主的な国々と連帯をして頑張ってほしいとせつに願うところだ。 (2022.4 記)
本当にすごいですよね。
こういう人と同じ時代を生きることができたことを誇りに思いますし、後の時代に少しでも伝えたいと思います。