アナイス・ニン『小鳥たち』
カバーは半透明の薄い紙で、真ん中にキラキラ光る植物(?)の絵。
蕾のような、開いた花のような、細い葉のような不思議な形をしている。
カバーを外すと、表紙の同じ場所に、より繊細な線で同じ形の絵が現れる。
柔らかい産毛のような。
これは鳥の毛なのか。
タイトルの『小鳥たち』から、そう考えてみる。
ページのあちこちに鳥の羽が舞っている。
エロティックな13の短編。
「まえがき」に、困窮した作家が、お腹ぺこぺこの状態で書いたとある。
金銭のために書かれた、エロティシズムに焦点を当てた物語は、自然ではなく、娼婦めいたものになってしまうという。
そんな言い訳めいた説明が、興を削ぐどころか、むしろ期待を抱かせる。
いくつかは、画家とモデルの話。
必要最小限の状況説明と、大胆な性の描写。
しかし、欲情目的の陳腐な小説とは異なり、どれも不思議と品がある。
エロスを排したら、アナイス・ニンはどんな文章を書くのだろう。
装丁、装画は柄澤齊氏。(2019)