マシュー・シャープ『戦時の愛』
大量の絵の具を塗りたくったカバーの絵は、よく見ると人の顔だ。
目も鼻もないのに、なんとなく表情が想像できて不思議な気分になる。
75の短編集。
一番短いものはたった5行しかない。
短いからか、展開が意外すぎるからか、これで終わり? と感じるものが多い。
理解できないものもたくさんあって、ぼくの知識が足りないのか、理解力が及ばないのか、経験が不足しているのかと悩む。
もしかしたら、共感されるのを拒んでいるのかもしれないとも思う。
激しく理解されたいと望んでいるのに、言葉足らずなのかもしれないとも思う。
感覚にまかせて書いているのか。
あるいは丁寧に推敲を重ねて書いているのか。
カバーの絵が、思いつきではなく、実は緻密に計算された筆の運びで成り立っていると気づくと、何度も読み返してみたくなる短編揃いなのだ。
装画は武田鉄平氏、装丁は宮古美智代氏。(2022)