ロビンソン本を読む

本とデザイン。読んだ本、読んでいない本、素敵なデザインの本。

戦時の愛

2022-08-13 10:32:55 | 読書
 マシュー・シャープ『戦時の愛』



 大量の絵の具を塗りたくったカバーの絵は、よく見ると人の顔だ。

 目も鼻もないのに、なんとなく表情が想像できて不思議な気分になる。


 75の短編集。

 一番短いものはたった5行しかない。

 短いからか、展開が意外すぎるからか、これで終わり? と感じるものが多い。

 理解できないものもたくさんあって、ぼくの知識が足りないのか、理解力が及ばないのか、経験が不足しているのかと悩む。

 もしかしたら、共感されるのを拒んでいるのかもしれないとも思う。

 激しく理解されたいと望んでいるのに、言葉足らずなのかもしれないとも思う。
 

 感覚にまかせて書いているのか。

 あるいは丁寧に推敲を重ねて書いているのか。

 カバーの絵が、思いつきではなく、実は緻密に計算された筆の運びで成り立っていると気づくと、何度も読み返してみたくなる短編揃いなのだ。


 装画は武田鉄平氏、装丁は宮古美智代氏。(2022)