つばた徒然@つれづれ津幡

いつか、失われた風景の標となれば本望。
私的津幡町見聞録と旅の記録。
時々イラスト、度々ボート。

夜に吼える。

2022年09月19日 10時00分00秒 | 日記
                          
(※よろしかったら前回投稿と併せてご覧くださいませ)

令和四年(2022年)9月18日。
旧津幡宿四町、清水・庄・加賀爪・津幡の秋祭りは無事終了。
コロナ禍のため過去2年中止の憂き目にあっていたが、3年ぶりの開催となった。
当日は、4つの町内を早朝から獅子が練り歩いた。
家々の前で、薙刀を手にしたヒトが、霊獣・獅子を退治して厄払い。
演舞は世帯毎に行われるのだから、100回や200回では収まらない。
関係各位は忙しい時間を過ごしたと思う。



やがて、夜の帳が下り、提灯に明かりが灯る頃。
それぞれの根城から「四ツ角」目指し、獅子たちが集まってきた。



いつもは人気のない交差点に現れた黒山の人だかり。
一年のうち、この日、この夜だけの光景だ。
四頭の獅子が見守る中心では、アクロバティックな剣舞が披露。
祭囃子と万雷の拍手が夜空に吸い込まれてゆく。







「獅子」は日本に生息していないライオンが原型。
中国大陸から伝わった当初は「唐獅子」という空想上の生き物だったと推測。
やがて、獅子舞は儀礼や民俗芸能に広く深く取り込まれ、
ハレの場面と密接な関わりを持つようになる。
わが津幡町の場合は、この秋祭りだ。
時折、獅子同士が咆哮を上げてぶつかり合う。
現場は熱を帯びてゆく。





僕自身も、かつて当事者の一人として参加したことがある。
運行は早朝から夜まで、15時間を超える長丁場だ。
その間、声を出し、薙刀を手に舞い、獅子を動かす。
とても素面ではいられない。
喉の渇きを潤し、威勢をつけるために酒を呑む。
それはすぐに汗となって落ち、大地を濡らした。

いやでも疲労は蓄積してゆく。
反面、心の高揚は増してゆく。
次第に自分が自分じゃない何かに変化してゆくような錯覚を味わい、
得体の知れない衝動が身体の奥から突き上げてくる。
若かりし僕は、夜空へ向かって吼えた。
それは、不思議で悪くない体験だった。
                               
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする