つばた徒然@つれづれ津幡

いつか、失われた風景の標となれば本望。
私的津幡町見聞録と旅の記録。
時々イラスト、度々ボート。

3000年前のSister&Brоther&Мate.

2022年11月03日 19時22分22秒 | 手すさびにて候。
                         
英国人「ハワード・カーター」には、自信があった。
古代エジプトに魅せられ、画家から考古学者へ転身し四半世紀近くが経つ。
その間、体の中で燃え続ける情熱が訴えていた。
<彼は、ここに眠っている>--- と。

目星をつけた「王家の谷」の一角、発掘作業が始まって3日目。
地下へと続く階段が、更に掘り進めると封印された扉が出現。
刻印には「ツタンカーメン」!
「カーター」は、ついに夢を成し遂げたのだ。
時に1922年11月4日。
ちょうど今(2022/11/3)から100年と1日前の出来事だった。

ほんの手すさび 手慰み。
不定期イラスト連載 第二百十三弾「ツタンカーメンとアンケセナーメン」。



古代エジプト第18王朝のファラオ(王)「ツタンカーメン」。
僅か9歳で即位し、19歳で他界した少年王は、
歴史の奥深くに埋もれた目立たない存在だった。
それが“世紀の大発見”を機に一変。
考古学上の大スターになったのは、ご存じのとおりである。

小学生の頃、その王墓発掘に関する本を読んだ。
確か学級文庫の中の1冊だったと思う。
僕は、興奮を覚えながらページをめくった。

盗掘を免れた王墓には、死者が来世へ行っても困らないようにと、
食料、ワイン、衣類、家具など、あらゆる生活用品が揃っていた。
また、有名な黄金のマスクや、黄金の棺。
背もたれに王と王妃のレリーフを嵌め込んだ黄金の椅子。
黄金のサンダルなど、数々の遺品も収められていた。
僕は、それら絶大な富と権力を示す副葬品の描写に心を躍らせ、
やがて「献花」の件(くだり)へ辿り着いた。

棺の上には、花が手向けてあったとか。
黒ずんだ草木は、ほのかに青を留めた「矢車菊」。
「カーター」は、王妃「アンケセナーメン」の贈り物だと推測した。

--- 正直、今なら「できすぎ」と思わないではないが、
ピュアな少年だった当時は違う。
先立つ夫に捧げた3000年前の花に込めた思いはいかばかりかと想像し、
盛大にのぼせ上ったものである。
(※花のエピソードについては真偽諸説アリ)

さて「ツタンカーメン」と「アンケセナーメン」は、異母姉弟だったという。
古代エジプト王朝に於いて、近親婚は珍しいことではない。
「王族を特別な存在にする」と考えられていたのだ。
王は神の代弁者であり、神は神と結婚するのだから、王族もそれに倣った。
現代の尺度に照らし合わせ眉をひそめてはいけない。
紀元前の特異なファミリーのハナシである。
また、少なくとも「アンケセナーメン」にとっては悪くない縁組だった様だ。

彼女は生涯3度結婚している。
1人目は、実の父。
次が「ツタンカーメン」。
3人目は、伯祖父(祖母の兄)。

初婚、再々婚に比べれば、
幼馴染みで気心の知れた相手と過ごした時間は、幸せだったと思いたい。
幾つかの仲睦まじいエピソードも伝わっている。
権力争いや陰謀渦巻く王宮で暮らす2人は、
互いを支え合い、慈しみ愛する「マブダチ」のような間柄だったのかもしれない。

(今回の文面は、同カテゴリー過去投稿第十二弾
 「大発見と大衝撃~ツタンカーメン」を元に加筆修正した。)
                               

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