つばた徒然@つれづれ津幡

いつか、失われた風景の標となれば本望。
私的津幡町見聞録と旅の記録。
時々イラスト、度々ボート。

その夜を超えろ。

2021年12月31日 15時15分15秒 | 手すさびにて候。
                      
時は、今から1000年以上の昔。
所は、中近東の王国。
その国王が、妻の不貞を目撃して極度の女性不信に陥り「暴君」に変貌した。
毎日、宮殿に処女を連れてこさせ一夜を共にし、翌朝、首をはねた。
理不尽な処刑の犠牲者は、3年余りで3千人に上った。

困り果てたのは、大臣だ。
都から年若い娘の姿が消えても止まない要求に応えねばならない。
父の苦悩を見るに見かねて、大臣の愛娘「シェヘラザード」が立ち上がる。
蛮行を止めるべく、夜伽役に志願。
乙女を散らしたベッドの上で、寝物語を語り始めた。

『バクダッドの町にシンドバットという貧しい荷担ぎがおりました---』(※1)

ほんの手すさび 手慰み。
不定期イラスト連載 第百九十弾「王妃と1001の夜」。
              


「千夜一夜物語~アラビアン・ナイト」は“世界文学”と言っていい。
中でも次の3つ---
「シンドバッドの冒険」。
「アラジンと魔法のランプ」。
「アリババと40人の盗賊」は取り分け有名。
ハリウッド映画の影響もあり、
児童文学の古典としての印象が強いかもしれない。

しかし、それらはほんの一部。
落語を思わせる滑稽話や人情話。
推理小説のようなサスペンス。
どぎついアダルトな描写も少なからず。
豪華絢爛、奇想天外な説話物語集なのだ。

大いなるフィクションは、史料としての価値も有する。
著された当時の暮らしや息遣い。
歴史が培ってきた文化や宗教観。
交易に育まれたグローバル精神。
中世アラブ世界を閉じ込めた、一種の「タイムカプセル」とも言えるのだ。

--- さて、語り部のその後である。

王は「シェヘラザード」の寝物語に夢中になった。
続きが気になって仕方がない。
初めて、処刑を1日延期した。

あとは彼女の思う壺。
ある夜は、佳境に差し掛かったところで話を打ち切り。
ある夜は、明日はもっと面白い話だからと期待を煽る。
そんな睦み合いを重ねる事、千と一夜。
三人の子宝に恵まれ、王はついに改心。
「シェヘラザード」を正妻に迎えた。

『--- アラジンとお姫さまは、長い間たのしくくらしました。
 そして、王さまがおかくれになった時、
 二人はとうとう、王さまとおきさきさまになりました。
 そして国をよくおさめました。
 いつまでもいつまでもその国はさかえたということであります。』
(※2)

(※1/訳:菊地寛「アラビヤンナイト 船乗りシンドバッド」より抜粋引用)
(※2/訳:菊地寛「アラビヤンナイト アラジンとふしぎなランプ」より抜粋引用)

<おわりに>

今投稿が2021年のラスト。
拙い文面やイラスト、偏った話題を書き散らしてきたが、
お付き合いいただいた皆様、どうもありがとうございました。
どうか来年もよしなに。
よい年をお迎えくださいませ。
では、また。
           
「つばた徒然@つれづれ津幡」主宰、りくすけ。

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