先の土曜の朝、ランドセルを背負った小学生とすれ違った。

普段なら休みのはずだが、黄色い帽子が次々と校舎へ吸い込まれて行く。

授業参観だろうと見当をつけ、彼らを誘導する女性に質問してみたのだが、
返答のニュアンスは少々違う。
どうやら、最近は「学校公開」と呼ぶらしい。
しかも、特定の授業が対象になるのではなく、
およそ1週間に亘って、自由に観覧できるのだという。
これも、就業の曜日や時間帯が多様化した配慮なのだろう。
また、男女の別なく散見する保護者のファッションは、
フォーマルありカジュアルありと自由な雰囲気で、皆一様に洗練された印象。
…という事は、昭和のお馴染みの風景は、過去のものになったのだろうか?
僕が子供の頃の授業参観の参加者は、母親ばかり。
おめかしヘアは「ハードパーマ」が基本。
着物姿、ワンピースなど、いわゆる余所行きのいで立ちである。
授業開始数分前にドアを潜るや否や、まずは社交辞令の応酬。
「こないだは、ウチの子がお世話になってぇ~スンマセ~ン。
なんか、キッカンこと言っとらんかった?!」
(※意訳:先日は私の子供が世話になってありがとう。
何か失礼な言動をしていませんでしたか?!)
「な~ん、なんも、なんも!おっとなし~子でビックリしたわいね。
ほれにぃ、男の子やし、ちょっとキカンくらいでいいわいね。」
(※意訳:まったく心配ありませんよ。とても良い子ですね。
たとえ、少々度が過ぎたとしても気にしないで。
男の子は元気すぎるくらいでちょうどいいものです。)
そんな喧しいやり取りを横目で見ながら、子供達もひそひそ話。
「お前のか~ちゃん、シャッキシャキやな!ほれにお前にソックリやがいや!」
「お前、センセーに当てられたらどうすれんて!」
「ダラッ!縁起でもねー事ゆーなま!」
(※意訳:念入りにお化粧した君のお母さん、やっぱり親子だね、よく似ているよ。
ところで、衆人環視の中、先生に指名されたら緊張するよね?
こいつぅ、煽るような事を言うなよ。)
やがて、先生の登壇で静まり返る空間。
我が子の一挙手一投足を見守る母の目は、獲物を狙う猛禽類のそれ。
下手を打って恥をかかせたら承知しないぞというプレッシャーが滲み出ていた。
白粉やヘアスプレーの香りが充満しむせ返る教室内は、一種の戦場だった。

普段なら休みのはずだが、黄色い帽子が次々と校舎へ吸い込まれて行く。

授業参観だろうと見当をつけ、彼らを誘導する女性に質問してみたのだが、
返答のニュアンスは少々違う。
どうやら、最近は「学校公開」と呼ぶらしい。
しかも、特定の授業が対象になるのではなく、
およそ1週間に亘って、自由に観覧できるのだという。
これも、就業の曜日や時間帯が多様化した配慮なのだろう。
また、男女の別なく散見する保護者のファッションは、
フォーマルありカジュアルありと自由な雰囲気で、皆一様に洗練された印象。
…という事は、昭和のお馴染みの風景は、過去のものになったのだろうか?
僕が子供の頃の授業参観の参加者は、母親ばかり。
おめかしヘアは「ハードパーマ」が基本。
着物姿、ワンピースなど、いわゆる余所行きのいで立ちである。
授業開始数分前にドアを潜るや否や、まずは社交辞令の応酬。
「こないだは、ウチの子がお世話になってぇ~スンマセ~ン。
なんか、キッカンこと言っとらんかった?!」
(※意訳:先日は私の子供が世話になってありがとう。
何か失礼な言動をしていませんでしたか?!)
「な~ん、なんも、なんも!おっとなし~子でビックリしたわいね。
ほれにぃ、男の子やし、ちょっとキカンくらいでいいわいね。」
(※意訳:まったく心配ありませんよ。とても良い子ですね。
たとえ、少々度が過ぎたとしても気にしないで。
男の子は元気すぎるくらいでちょうどいいものです。)
そんな喧しいやり取りを横目で見ながら、子供達もひそひそ話。
「お前のか~ちゃん、シャッキシャキやな!ほれにお前にソックリやがいや!」
「お前、センセーに当てられたらどうすれんて!」
「ダラッ!縁起でもねー事ゆーなま!」
(※意訳:念入りにお化粧した君のお母さん、やっぱり親子だね、よく似ているよ。
ところで、衆人環視の中、先生に指名されたら緊張するよね?
こいつぅ、煽るような事を言うなよ。)
やがて、先生の登壇で静まり返る空間。
我が子の一挙手一投足を見守る母の目は、獲物を狙う猛禽類のそれ。
下手を打って恥をかかせたら承知しないぞというプレッシャーが滲み出ていた。
白粉やヘアスプレーの香りが充満しむせ返る教室内は、一種の戦場だった。