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【原発の不都合な真実】インタビュー企画 「既得権益を排して民主的なエネルギー政策を実現するのか、過去の誤りを繰り返すのか、日本は今、岐路に立っている」-トーマス・コーバリエル氏
自然エネルギー財団 http://jref.or.jp/
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先進的なエネルギー政策で知られるスウェーデンは、バイオマスエネルギーの活用などを進め、経済成長を遂げながら、温室効果ガスの排出も大きく減らしてきた。08年3月から、そのスウェーデンのエネルギー庁長官を務め、このほど、日本のソフトバンクの孫正義会長が設立した「再生可能エネルギー財団」の理事長に就任したトーマス・コーバリエル氏は、日本のエネルギー政策は今、大きな岐路に立っていると話す。
―福島第1原発事故をどうみるか。
「事故は、結果的に極めて深刻なものになった。幸いなことに、風が海側に向かっていたために、日本人の健康と経済にとって本当に破局的な結果だけは避けられた。これは不幸中の幸いだったといえる」
―スウェーデンの原子力政策はどうなっているのか。
「スウェーデンでは1999年から2005年にかけて2基の原発を閉鎖した。現在の連合政権誕生時の合意で、古くなった原発をコスト高を理由に新しくすることは認めるが、新規の建設には一切、政府の補助はしないということになっている。事故後もこれは変わっていないが、新規原発建設の動きはない」
―その理由は。
「隣国のフィンランドは新規原発の建設を決めたが、09年に予定されていた完工は13年に延び、総工費も2~3倍になるとされている。原子炉のコストがとても高いということが最近、はっきりと認識されてきた。原子力が経済的に割に合わないということだ。誰も巨額の投資をしたがらず、誰も大事故のリスクを負いたがらない。原発の電力を好んで買う企業も少ない。事故があった時に責任を問われ、非難されるからだ」
―原発閉鎖で二酸化炭素の排出量は増えたのか。
「1990年以来、スウェーデンの経済は1・5倍に成長したが、排出量は約20%減っている。決め手となった政策は、CO2の排出量に応じて化石燃料に課税する炭素税の導入で、風力発電やバイオマスなどの再生可能エネルギーの競争力が高まった。現在、多くの国の産業が化石燃料価格の高騰で苦しんでいるが、スウェーデンの産業界は、ずっと以前から高い化石燃料価格に対応してきたので、今は強い国際競争力を持っている」
―再生可能エネルギーの現状は。
「昨年、大型水力を含めた再生可能エネルギーで発電した電力量は、全消費量の55%強に達した。風力発電は予想を超えるペースで拡大し、価格はどんどん安くなっている。さまざまな企業が風力発電に投資をしていて、原子力とは対照的だ。バイオマス発電はスウェーデンの重要な成功例の一つで、石油や原子力の代替、温室効果ガスの排出削減、農業廃棄物問題の解決など多くの利点がある」
―なぜ、日本の財団への転職を決意したのか。
「日本の友人から『日本の再生可能エネルギーの普及に貢献してくれないか』と依頼された。福島原発事故という悲劇的な事態に直面した後、日本のエネルギー政策は大転換を求められている。スウェーデンでの再生可能エネルギー開発の経験などを基に、日本のこれからに貢献したいと考えた」
―日本への提言は。
「エネルギー政策の改革で重要な点は、送電や配電事業を、発電事業から分離して市場をオープンにすることだ。これまで同様、巨大な電力会社が送配電網をコントロールするならば、新しい発電設備を電力網に接続することを難しくして、新しい参加者を市場から締め出すことを可能にしてしまう。これでは新たな技術の開発や新規参入が進まなくなり、電気料金も安くならない。補助金の廃止や、炭素税のように環境への悪影響を価格に反映させるといった経済的な手法も重要になる」
―転換は可能だろうか。
「国内の市場が育たなかったために、日本の再生可能エネルギー関連ビジネスは厳しい状況に置かれている。だが、日本の技術は一流だし、風力や太陽光の資源はデンマークやスウェーデンより豊かだ。各国が積み上げた多くの政策も大きな参考になる。既得権益を排して民主的なエネルギー政策を実現するのか、過去の誤りを繰り返すのか、日本は今、岐路に立っている」(聞き手・井田徹治)
++++++++++++++++++++++ トーマス・コーバリエル 1961年スウェーデン生まれ。物理学、環境経済学などが専門。バイオマスエネルギー関連企業などを経て08年3月から、スウェーデン政府のエネルギー庁長官。この9月から日本の自然エネルギー財団の理事長に転身。
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