増える外国人住民 苦慮する自治体 3割が「対応追いつかぬ」
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20181205/k10011735801000.html
外国人材の受け入れ拡大を政府が検討する中、NHKが、外国人住民の割合が高い全国50の自治体に取材したところ、生活支援などの対応が追いつかなくなっているという自治体が3割に上ることが分かりました。国に対して、多くの自治体が財政支援などを求めています。NHKは、外国人住民の割合が高い全国50の市区町村に先月アンケート調査を行い、回答を得ました。このうち、外国人住民に関する業務に自治体として対応できているか尋ねたところ、「追いついていない」または「どちらかというと追いついていない」と答えた自治体が15と、現時点で、すでに対応が追いつかなくなっているという自治体が3割に上りました。また、課題になっていることを複数回答で尋ねたところ、窓口業務などでの「多言語化への対応」と答えた自治体が最も多く、全体の8割の41に上りました。英語やポルトガル語など、これまで対応してきた言語に加えて、ベトナム語やネパール語など多様な言語への対応が必要になっているということです。そのほかの課題としては、ゴミ出しなどの生活ルールや近隣トラブルの対応といった「生活支援」を挙げた自治体が28、「子どもへの教育支援」が18、「防災情報の伝達」が11でした。課題解決のために国に求めることについても尋ねたところ、「財政支援」を挙げた自治体が7割余りの36に上ったほか、通訳や教育現場のスタッフなど「人的支援」を求めた自治体も18ありました。
増える財政負担に自治体は…
製造業の工場が多く立地する福井県越前市では、ここ数年、日系ブラジル人を中心に外国人の数が増え続けていて、先月1日現在で4326人、総人口に占める割合は5.2%に上っています。日系3世までは「定住者」としての在留資格が認められ、就労にも制限がないことから、多くは市内の工場で働いています。特に近年は若い世代の日系ブラジル人が家族で来日して長期間住み続けるケースが増えていて、これに伴って外国人の子どもの数も増加しています。市内で最も外国人が多い武生西小学校では、全校児童355人のうち、79人が外国人と、その割合は5人に1人を超えています。学校では、日本語を十分理解できない児童のための特別クラスを設けて可能なかぎりマンツーマンで指導するほか、多くの教材を教員たちが手作業でポルトガル語に翻訳するなど、さまざまな方法で外国人児童を支援しています。県が派遣する専門の教員2人を含めて7人が専属で指導や翻訳にあたっていますが、毎月のように新たな外国人児童が入ってくるため対応が追いついていません。こうした現状を受けて、市では毎年、独自の予算をつけて支援にあたる職員を増やしてきましたが、人件費が急増。今年度は3700万円余りと3年間で約2倍に増え、市では、このまま伸び続ければ市だけで負担し続けるのは限界だといいます。越前市の奈良俊幸市長は「市の単独予算でこのまま負担が伸びることは現実的に不可能で、国が予算措置をして適切な教員配置がされるように見直してほしい」と話しています。
専門家「国も企業も責任ある」
アンケートの結果について、外国人労働者の問題に詳しい法政大学の上林千恵子教授は「外国人の数が増えているだけでなく、日系人や技能実習生、留学生などさまざまな在留資格の人が同じコミュニティに住むようになっていることで、地方自治体の戸惑いが生じているとみられる。『負担を担うのは自治体だ』と、国に対する不公平感も持っているのではないか」と分析しています。そのうえで「ゴミ出しなどの生活習慣や教育の問題について、これまで国は自治体に任せていたが、外国人を入国させるのは国で、雇用を決めたのは企業なのだから、責任の一端を担うべきだ。特に日本語の教育などに必要な人件費は、いちばんお金がかかる部分なので、国として支援するべきだ」と指摘しています。