ワイマールの悪夢から 憲法公布の日に
今年はドイツのワイマール憲法誕生百年に当たります。民主的な憲法でしたが、ナチスに蹂躙(じゅうりん)されました。そんな人類史も忘れてはなりません。
一九一九年は大正八年です。日本ではカイゼル髭(ひげ)が流行していました。政治家も軍人も…。カイゼルとはドイツ皇帝。確かに威厳ありげに見えます。髭の形が自転車のハンドルに似ているから「ハンドルバームスタッシュ」の異名もありますが…。
その髭の主・ウィルヘルム二世は前年に起きたドイツ革命により特別列車でオランダに亡命していました。何両もの貨車には膨大な財産が満載でした。
完璧な基本権だった
ドイツは帝政から共和制へと変わりました。新しい議会がワイマールという東部の都市で開かれ、「ワイマール憲法」が制定されました。生存権の条文があります。「経済生活の秩序は、すべての人に人たるに値する生存の保障をめざす、正義の諸原則に適合するものでなければならない」と。
労働者の団結権なども保障されます。男女の普通選挙による議会政治も…。「ワイマル共和国」(中公新書)で元東京大学長の歴史学者林健太郎氏は「基本権はさすがにすぐれた憲法学者の作だけあって、最も完璧なもの」と記しました。基本的人権の保障が近代憲法の第一段階で、第二段階の社会権を装備した先進的憲法でした。
でも、この共和国は難題に直面します。第一次大戦後のベルサイユ条約で領土の一部を失ったうえ、多額の賠償金を負っていました。空前のハイパーインフレが襲いました。物価水準は大戦前に比べ二万五千倍を超え、マルク紙幣は額面でなくて、重さで量られるありさまです。さらなる災難は世界大恐慌でした。六、七百万人ともいわれる失業者が巷(ちまた)にあふれました。
独は「戦う民主主義」で
ここでチョビ髭の男が登場します。そう、ヒトラーです。「ベルサイユ条約の束縛からドイツを解放する」と訴えて…。三〇年の選挙で右翼・ナチ党の得票率は18・3%だったのに、三二年には37・3%と倍増します。その翌年に高齢の大統領がヒトラーを首相に任命しています。「強いドイツを取り戻す」ためでした。
直後に国会議事堂が放火される事件が起きます。政権を握ったヒトラーはこれを機に、言論の自由や集会・結社の自由など憲法に定めたはずの基本権を停止する大統領令を発布します。いわゆる国家緊急事態宣言です。
皮肉にも正式名は「人民と国家防衛のための緊急令」です。憲法にあった緊急事態条項を巧みに利用したのです。決して選挙で過半数を得たわけではないのに、憲法停止という強権を手にしました。有名な全権委任法をつくったのも同じ年。違憲の法律も可能になるもので、ワイマール憲法は完全に息の根が止まりました。
チョビ髭の男から独裁者たる「総統」へ。その権力掌握がいかに早業だったかがわかります。林氏はこう書いています。「ドイツ国民は(中略)官僚の支配に馴(な)れており、みずからが国家を形づくるという意識と慣行に欠けていた」と。「敗戦(第一次大戦)によって突然、民主主義と政党政治という新しい実践を課せられたとき、彼らはそれをいかに駆使するかに迷った」とも。
民主主義を重荷に感じると「上からの強力な支配に救いを求める人々が増えた」という指摘は今日にも通じるものがあります。
この反省から第二次大戦後、当時の西ドイツは「戦う民主主義」の道を歩みます。憲法秩序に反する団体の禁止などを基本法に書き込んだのです。「自由の敵には自由を与えない」精神です。現在も同じです。
日本国憲法は「戦う民主主義」の考えを採りませんが、近代憲法の第三段階である「平和的生存権」を採用しています。公布から七十三年たち自由と民主主義は根付いたかに思われます。でも、錯覚なのかもしれません。
貧富の格差とともに貧困層が増大し、若者が夢を持てない。老後の生活も不安だ-そんな閉塞(へいそく)感の時代には、強力な指導者の待望論に結びつきかねない怖さが潜みます。政治家も付け込みます。
民衆の不満は「愛国」で
敵をつくり、自らの民族の優位性を唱えます。危機感をあおり、愛国を呼び掛けます。民衆の不満を束ねるには古来、敵をつくる方が便利で簡単なのでしょう。
高知知事選 進む地域共闘体制 全5ブロックで発足
松本予定候補の勝利必ず
市民と野党、知恵と力合わせる
7日告示の高知県知事選(24日投票)で、市民と野党の地域レベルでの初の共闘体制が1日までに、県内全5ブロックで発足しました。「ここでいっしょに生きよう だれ一人取り残さない高知県政へ」と訴える野党統一の松本けんじ予定候補(35)=無所属新=の勝利をめざし、幅広い県民が知恵と力を合わせています。
![]() (写真)握手する松本知事予定候補(左)と広田選対本部長(その右奥)=2日夜、高知市 |
10月28日夜、地域ブロックで最初となる県西部、幡多(はた)地域の共闘の対策会議が四万十(しまんと)市で開かれました。中村九条の会のメンバーや社民党市議、日本共産党幡多地区委員長らが呼びかけたもので、全6市町村から地方議員や市民ら約40人が参加。「松本氏の魅力を広げよう」などと議論され、ビラ配りやポスター張りなどを分担しました。市町村ごとの共闘体制、選対を立ち上げ、四万十市では5日に決起集会を開くことを決めました。
須崎(すさき)市で開かれた高岡郡ブロックの対策会議にも全町村から参加。選対本部の幹事長で県議会会派「県民クラブ」の上田周五県議が「すばらしい候補者を得た。必ずみんなの力で、市民と野党の共闘の力で勝利させよう」と呼びかけました。
参加者は各市町村ごとに分かれて打ち合わせ、松本予定候補らの演説を紹介するDVDを使った小集会を旺盛に開こう、などと話し合いました。参加した、高知県版の市民連合に当たる「高知憲法アクション」の呼びかけ人、田口朝光氏は「初めての取り組みですが、とても新鮮な会でした。新たなつながりが生まれました」と話します。
安芸(あき)市で開かれた対策会議では、社民党県連の久保耕次郎代表があいさつし「市民と野党の共闘の勝利で安倍政権に痛打を与えよう」と力説しました。
7月の参院選徳島・高知選挙区で、安芸市では野党統一候補としてたたかった松本氏の得票が自民党現職を上回りました。議論では、連合傘下の労働組合の組合員からも「支持拡大に全力を挙げる」と決意が語られました。
4月の県議選の南国市区(定数2)では日本共産党の岡田芳秀氏が立憲民主、社民、新社会など各党の支援を受けて初当選。史上初めて党議席の空白を克服し、自民党独占を打ち破りました。
その南国市で10月31日夜に開かれた対策会議には、選対本部の本部長に就いた、社会保障を立て直す国民会議の広田一衆院議員が国会から駆け付け、立憲民主党県連の幹事長で県民の会の田所裕介幹事長が司会を務めました。
参加した市内の男性(87)は「市民と野党の共闘の発展を力に勝利したい。もう頑張るしかありません」と話しています。
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