2023年度から5年間の防衛費を総額43兆円とした政府の防衛力整備計画を巡り、円安や資材高などの影響で装備品の単価が跳ね上がり、既に計画額より8000億円以上超過する恐れがあることが、本紙の試算で分かった。防衛省が調達数量や単価を公表していない装備品も多く、本紙の試算は一部にとどまる。岸田政権が決定した巨額の防衛費の超過額はさらに膨らみ、国民の負担がより重くなる懸念が早くも高まっている。(川田篤志)
防衛費の増額 政府は昨年末、国内総生産(GDP)比で1%程度で推移していた防衛費について、5カ年計画の最終年となる2027年度には関連費と合わせて2%に倍増する方針を決めた。27年度には年約11兆円となる。GDP比2%は、北大西洋条約機構(NATO)が加盟国に求める共通目標で、自民党も選挙公約で2%への引き上げを求めていた。
政府は昨年末に閣議決定した防衛力整備計画で、今後5年間かけて購入する各装備品をリストアップ。必要経費を積み上げ、総額を43兆円程度と決めた。
本紙は、23年度予算や24年度予算編成に向けた概算要求の単価が27年度まで続くと仮定し、残り3年間で予定数量を購入した場合の主な装備品の経費を試算。計画額と比較した。
◆F35AにCH47…さらに未公表の装備品も
米国政府を通じた「対外有償軍事援助(FMS)」で40機調達するステルス戦闘機「F35A」のうち、23年度は8機で1069億円を計上。24年度概算では8機で1077億円を要求した。計画策定時に見積もった単価100億円に対し、23、24年度の単価平均は134億円に上昇。今後3年間で残り24機を購入した場合、計画額より1400億円近く膨らむ。
試算ではさらに、護衛艦「FFM」12隻の購入費が計画額より約1900億円の超過。輸送ヘリコプター「CH47」34機も、1機当たりの単価が最大70億円増え、超過額は約1600億円に上る。潜水艦など他の装備品の超過額も合わせると、本紙の試算で超過総額は8517億円に達する。
一方、敵基地攻撃能力(反撃能力)に使う国産長射程ミサイルなど、「相手に手の内を明かす」として予定調達数量を公表していない装備品も多数ある。
防衛省は増額理由として、円安や資材高、労務費の高騰などを挙げる。昨年末の計画策定時は原則1ドル=108円で換算したが、今年8月の24年度概算要求時は1ドル=137円で換算した。木原稔防衛相は18日、本紙などのインタビューで「(43兆円の)金額の範囲内で行うことが重要だ」と述べ、経費の精査などを徹底すると強調した。
一橋大の佐藤主光教授(財政学)は「(防衛力整備計画は)43兆円という規模ありきだった。防衛費の膨張はさらなる国民負担につながるため、超過が見込まれる装備品の洗い出しなど実態を検証し、調達数量を絞り込むべきだ」と話す。
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