市民運動に参加する住民の個人情報に関し、警察が「収集」したこと自体も違法だとする判断を、先週、名古屋高裁が示した。捜査当局が、恣意(しい)的に市民の個人情報を収集できる現状を批判し、強い危機感もにじませた。関連の法整備や監視機関の設置を急ぐべきではないか。
原告は、岐阜県の住民4人。県警大垣署員が2013~14年、同県での風力発電施設の建設計画に反対する勉強会を開いた住民らの市民運動参加歴や病歴などを収集し、事業者の中部電力子会社に提供したのはプライバシー侵害で違法だとして、県などに損害賠償などを求めて提訴していた。
一審岐阜地裁は「個人情報の提供は違法だが、収集は適法」と判決。双方が控訴していたが、高裁は「(個人情報の)収集も提供もみだりにされない自由」が憲法13条で保障されているとして、大垣署の手法を「違法」と判断した。その上で、県に情報の一部抹消と請求額通りの賠償金440万円の支払いを命じた。
特筆すべきは高裁判決が、当局の個人情報収集のあり方に強い懸念を示した点だ。「(収集の)目的と必要性を捜査機関側が立証しなければならない」とし、市民運動を際限なく危険視して情報収集する公安警察の手法は「憲法21条(集会、表現などの自由)に反する」と断じた。
また、情報収集の対象や許されない場合などを定めた法律上の規律がなく、恣意的に収集が行われていたと指摘。県公安委員会や警察庁、国家公安委員会の監督にも、警察組織内部での自浄作用にも期待できないとの認識を示し、監視、監督する第三者機関が存在しないことを問題視。このままでは「(個人情報収集の)対象者が全国民に及ぶ可能性もないとはいえない」との危機感さえ示した。
同じ裁判長は先に、無罪確定者のDNA型などを警察庁データベースから削除するよう国に命じる判決を出し、既に確定している。
その判決の中でも、取得・保管の運用があいまいなDNA型の扱いに関する法の整備を国に強く促し、「第三者機関による監督が必要だ」と求めている。今回の判決と合わせ、捜査当局がほしいままに個人情報を扱える現状への強い憂慮の表明といえよう。国会や政府は、この警鐘に、すみやかにこたえるべきだ。
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