岸田文雄首相が国民民主党副代表だった矢田稚子元参院議員を首相補佐官に起用したことが波紋を広げています。そもそも首相補佐官はどんな仕事で、岸田政権はなぜ、野党側から矢田氏を「一本釣り」したのでしょうか。(大野暢子)
Q 首相補佐官は何をするのですか。
A 内閣法では、首相の命を受けて内閣の重要課題などのうち、特定の分野に関する政策の企画や立案を手伝うとされています。人数は5人以内と定められ、自身の専門分野や経験を基に首相に助言する「ブレーン」です。
Q どういう人が就くのですか。
A 歴代内閣では、首相が重視する政策分野に精通した国会議員や官僚出身者が主に起用されています。今回の改造内閣の首相補佐官も、矢田氏以外の4人は自民党の衆参国会議員や元官僚です。
Q 「首相秘書官」という名称の似た役職もありますが。
A 首相秘書官はいわば首相の「黒子」です。首相のスピーチ原稿の作成やスケジュール管理、国会答弁の調整や各省庁との連絡調整を担うなど、首相の業務全般を裏方として支えます。首相の議員秘書や各省庁の幹部クラスの官僚が就きます。
Q 野党議員だった矢田氏が抜てきされた理由は。
A 昨年の参院選で落選しているため、あくまで「民間人」として起用したとの建前です。公明党の山口那津男代表は19日の記者会見で、賃金・雇用担当の補佐官となった矢田氏について、首相から電話で「労働現場に経験の豊富な素養や能力を発揮してもらいたい」との考えを伝えられたと述べました。
Q 実際のところ、岸田政権の狙いは。
A 矢田氏は、国民民主を支援する連合傘下の民間産業別労働組合の一つ「電機連合」の出身。首相補佐官への起用が、「野党分断」や労組票の取り込みにつながるとの期待感があります。民間労組の集票力は自民にとっても魅力的なためです。野党からは、矢田氏の「政権入り」について、「(国民民主の)連立入りへの布石と思われても仕方ない」(立憲民主党の泉健太代表)などの批判が出ています。
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