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◆ロッキード社製買え 圧力 米長官が極秘来日 本紙スクープ 穀田議員質問 「イージス・レーダー選定疑惑」の構図

2021年02月25日 17時13分50秒 | ●YAMACHANの雑記帳

赤旗電子版紙面

ロッキード社製買え 圧力

米長官が極秘来日 本紙スクープ 穀田議員質問

「イージス・レーダー選定疑惑」の構図

「レーダー選定直前に米ミサイル防衛庁長官が来日し、ロッキード・マーチン社のレーダーを選ぶよう圧力をかけた。当時の防衛副大臣も認めている」―。総額1兆円を超え、自衛隊史上最も高価な兵器の一つである陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」。そのレーダー選定をめぐり、本紙は防衛省元幹部から、このような証言を得ました。

 その真偽をただした日本共産党の穀田恵二議員の質問に、岸信夫防衛相は「2018年7月23日、グリーブス米ミサイル防衛庁長官(当時)が防衛省を訪問した」と述べ、「極秘来日」の事実を認めました(9日、衆院予算委員会)。質問は与野党に大きな衝撃を与え、「ロッキード社ありき」の不透明な選定過程を解明しようとの機運が高まりました。

 米政府と世界最大の巨大軍需企業が圧力をかけ、そこに一部の利権集団が群がって国民の血税を食い物にしようとしている―。本紙が得た証言をさらに紹介し、その構図を掘り下げていきます。

試作品もない

 17年12月、米トランプ政権の「米国製武器爆買い」要求に迎合した安倍政権は、陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の導入を閣議決定。防衛大綱・中期防衛力整備計画にも導入予定はなく、安倍官邸がおしつけたものです。

 翌年6月、防衛省は米国防総省傘下の米ミサイル防衛庁(MDA)からレーダーについて、(1)レイセオン社「SPY6」(2)ロッキード社「LMSSR(現SPY7)」―の提案を受け、7月30日、LMSSRの選定を公表しました。

 しかし、当時、SPY6は米海軍がイージス艦の次期レーダーとして採用を決めていた一方、LMSSRは試作品さえできておらず、配備の時期も見通せないものでした。なぜ、LMSSRなのか。当時から疑問視されていました。

「耳打ちした」

 これに関して、前出の防衛省元幹部は「MDAは、最初からLMSSRの売り込み攻勢をかけていた」と証言します。その最初の舞台となったのが、閣議決定直後の18年1月10日、ハワイでした。米軍のイージス・アショア試験施設の視察に訪れた小野寺五典防衛相(当時)を案内するため、わざわざワシントンから飛んできたのが、グリーブス長官でした。その際、小野寺氏に「SPY6は試作品にすぎず、LMSSRがベストだと耳打ちした」といいます。なぜ、MDAはロッキード社に肩入れをしたのでしょうか。

米軍需企業“窮状”に血税

 米海軍がイージス艦に搭載しているイージス・システム(別項)はこれまで、世界最大の軍需企業ロッキード・マーチン社が受注。日本などにも米国の武器輸出制度「有償軍事援助」(FMS)で輸出しており、海上自衛隊イージス艦は同社のレーダー「SPY1D」を搭載しています。

巻き返し

 ところが2013年、ライバル社のレイセオンが開発したSPY6が米海軍イージス艦のレーダーとして正式に採用され、ロッキードに衝撃を与えました。海自もSPY1Dの後継として、SPY6を選択肢としています。文字通りの「ドル箱」であるイージス・システムが根こそぎ奪われかねない―。米軍需企業関係者は「巻き返しを図るため、ロッキードがMDAに働きかけた」とみています。

 しかし、同社の次期レーダーはまだ試作品さえできていない「カタログ」段階でしかありません。『週刊新潮』20年11月19日号が報じたロッキード社日本法人の内部文書によると、防衛省への正式な提案直前の18年5月末、「MDAより…レーダー性能向上要求」があったとしています。SPY6の性能を知る立場にあったMDAが、ロッキード社が選定で有利になるよう“指南”していた様子がうかがえます。

 グリーブスMDA長官来日(同年7月23日)は、ロッキードのレーダーを選定させるための最終確認といえます。

529回接触

写真

(写真)イージス・アショア構成品の選定にあたって防衛省職員と関係企業等との接触報告(同省が日本共産党の穀田恵二衆院議員に提出)

 穀田議員の質問では、もう一つの衝撃的な事実が明るみに出ました。イージス・アショア構成品の選定に関わった防衛省職員と「業界関係者等」との接触が、18年2月末から7月末までの5カ月間に、529回もあったのです。土日祝日を除く平日は、連日数回という異常なペースです。

 岸氏は接触した会社・氏名の公表は拒みましたが、防衛省は、レーダー提案者はMDAとロッキードだけで、レイセオンは含まれていないことを認めています。

 防衛省元幹部は、防衛省内でMDAとロッキードに迎合する動きが起こり、「MDAやロッキードの提案に反対することが予想される海上幕僚監部を排除し、防衛省内局と陸上幕僚監部の主導で選定が行われた」と証言します。529回の接触の内訳について、岸防衛相は立憲民主党の本多平直議員に対して、(1)陸幕259回(2)内局151回―と、この両者で約8割を占めることを明らかにしました。(海幕は16回。10日、衆院予算委員会)

 政府は18年5月、陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の配備先として秋田・山口両県の陸自演習場とすることを決定。ところが19年5月に公表した地元への説明資料でデータの誤りが発覚。さらに20年に入り、迎撃ミサイルのブースターが演習場外に落下する可能性が明らかになりました。地元の強い反対の声もあり、同年6月、政府は配備断念に追い込まれます。

変更ない

表

 しかし、ロッキード・マーチンはその直後、本紙の取材に、自社のレーダーSPY7を含むイージス・システムについて、「予定通りの日程と予算で導入するよう作業している」と述べ、日本への売却に変更はないと表明したのです。

 さらに、陸上イージス導入の張本人である安倍晋三首相(当時)は退任直前の9月11日、異例の首相談話で、陸上イージス代替案の検討を指示しました。

 菅内閣で任命された岸防衛相は9月25日の記者会見で、「契約済みのレーダーを利活用することが合理的」と述べ、ロッキード社との契約を解除しない考えを表明しました。

 そして政府は12月、ロッキード社のSPY7を搭載する「イージス・システム搭載艦」2隻の導入を閣議決定します。いわゆる「洋上イージス」です。

 導入経費は2隻で5千億円以上。イージス艦2隻の4千億円を、1千億円以上上回ります。SPY6(4メートル四方)よりサイズが大きいSPY7(5メートル四方)を搭載するため、船体を大型化する必要があるからです。

 しかも、これには実射試験費用などが含まれていません。つまり、本来はメーカー側が負担すべき開発費用まで、ユーザー(日本)が負担させられる可能性があるのです。

 さらに、運用維持費や1発40億~50億円とされる迎撃ミサイル・SM3ブロック2Aの導入経費(1隻あたり48発装填〈そうてん〉可能)を含めれば、1兆円を大きく超えます。

 米巨大軍需企業の“窮状”を救うため、血税が吸われようとしている―。そうした構図が浮かび上がります。

 穀田議員の質問を契機に、野党では「第2のロッキード事件になりかねない」として、「イージス・システム疑惑調査チーム」が24日に発足。レーダー選定をめぐる不透明な経緯や、洋上イージスの不合理さなどの追及が始まりました。今こそ、安倍・トランプ前政権の“負の遺産”から脱却し、国民の税金は国民のために使うべきです。


 イージス・システムとSPY6・SPY7 米海軍が防空戦闘を目的として開発した武器システム。360度全周をカバーするSPYレーダーを中核として、情報処理・射撃管制システム、ミサイル発射装置などで構成。米空母の護衛にとどまらず、対地攻撃や弾道ミサイル防衛などに対処。「イージス・アショア」は、イージス・システムを地上に配備したもの。

 SPY6は米海軍が2013年に次世代イージス艦用に導入を決定、24年に配備される見込み。SPY7は、米本土防衛用地上レーダー(LRDR)の派生型で、まだ実用化されていません。

表

2021年2月25日(木)


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