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高山祭(春と秋)
コロナ禍のため、各地で伝統の祭りが相次いで中止されている。こうした状況が長く続けば、祭り自体が消えてしまう懸念もある。この苦境を乗り切り、次の世代へつなげていくための知恵や工夫、粘り強い取り組みが必要だ。
実に残念だ。国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産にも登録された「青柏祭の曳山(ひきやま)行事」(石川)や「高山祭の屋台行事」(岐阜)=写真、2019年=など、コロナ対策で中止された祭事は枚挙にいとまがない。挙行すれば人々の「密」は防げず、主催者も苦渋の選択だっただろう。
特に心配なのは住民の減る山間地域の祭りだ。以前から担い手や後継者が減っている上に、祭礼で必要な道具も入手が難しくなり、存続の危ぶまれる例もある。
愛知県・奥三河地方の東栄町に伝わる「花祭り」は、七百年もの歴史を誇るが、高齢化や過疎のために一地区が一昨年限りで開催を休止。今シーズンは同町内の十一カ所で開催の予定だったが、これまでに九カ所が中止となった。
「花祭り」は研究者らが詳しい記録を映像などで残しているが、祭りはひとたび途切れると復活が困難だ。同町に限らず、由緒ある祭礼を先人から受け継ぐ住民には不本意かもしれないが、地域の外からの助力も仰ぐなどしてまずは存続を目指してほしいし、行政も長期的な支援を続けてほしい。
こうした中で、次代への継承を予感させる活動も行われている。
花祭りと同じく、国の重要無形民俗文化財の「安乗の人形芝居」(三重県志摩市)は二年続けて中止されたが、例年の芝居で活躍する地元の中学校の「郷土芸能クラブ」の生徒は、来年の上演に向け語りや三味線の稽古に励んだ。
また岐阜県可児市の白鬚神社で戦国時代から続くという「流鏑馬(やぶさめ)祭り」も昨年に続いて中止されたが、昨年と今年に騎乗する予定だった地元の若者四人が本番と同じ参道で馬にまたがり、関係者に勇壮な姿を披露。拍手を浴びた。
本来の姿の開催ではないにせよこうした活動を通じ、若い世代の祭りへの関心や、地域への愛着も深まっていくよう願いたい。
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