天と地の間

クライミングに関する記録です。

やっと現れた小さな生き物

2010年09月13日 | フェース
連休の国内遠征の前に少しでも持久力をつけておこうと、久しぶりに本匠へ行くことにした。
場所は前高エリア。今日の相手は達さん。一緒に岩を登るのは始めて。

10bのでアップの後、次のルートに移動しようとしたところ、頭の上でブーンという羽音がしたため、スズメバチ
と思い、思わず身をかがめて羽音がするほうを見ると、羽、胴体ともに輝いている昆虫が飛んでいる。これはただ者
ではないと視線を凝らして岩に着地したところを見ると玉虫であった。思わず声が出た。もっと近づいてくれないか
と思っているとすぐに飛び立ち、我々の頭上をしばらく旋回した後、なんと、私の胸にとまった。カブトムシやクワ
ガタなら捕まえるところであるが、手が出なかった。


岩にとまった玉虫。遠くからでも輝きが分かる。

玉虫をこれまで見た経験は2度。一度目は法隆寺で見た玉虫厨子。このときは何百年もたって輝きを放つ羽を見て、
いつかは生きたものを見たいと思いつつも、国宝に使われる昆虫、めったにお目にかかれないものと諦めていた。
それから10年以上たって、突然、姿を現した。隣を歩いていた同僚が偶然、捕まえたのである。その時の羽の輝き
を忘れることが出来ず、またいつか見たいものと思っていたが、やっと姿を見せてくれた。あれからまた10年以上
の歳月を経て。


近くの木にとまった玉虫。体長は4cmほど。
逃げられたくなかったので接写はしなかった。

その玉虫、幸運なことに近くの木の胸元の高さに止まり、撮ってくれといわんばかりのカメラアングルを提供して
くれた。そして、驚いたことに産卵を始めた。


産卵中の玉虫。周りの白っぽいものは木屑。産卵の準備のためかもしれない。
そう考えると、我々の頭上をしばらく飛んだのは威嚇だったのかもしれない。

玉虫色という言葉があるとおり、日本では小さな虫に美の表現を求めたり、形容したりするが、今回、改めてその
表現の豊かさに感じ入った。玉虫とはよくつけてものである。まさに「ぎょく」である。
最近では玉虫色のマニフェストとか玉虫色の施策などと揶揄する表現で使われがちで残念だが、燦然と輝くたとえ
が一般庶民の身近になかったことから玉虫が引き合いに出されたのだろう。実物を見れば、今でもそのたとえが色
あせないのがわかる。

見たいと思い続けていた私でさえ、これまで2回しか出会ってない。玉虫を見た事のある人は少ないだろう。そして、
これからますます稀となるだろう。
玉虫色が言葉だけの色にならないように、産みつけた卵が無事に孵るのを祈って、わたしは玉虫からそっと離れた。

肝心のクライミングのほうはアップを2本登った後、12aのルートを登ろうと思っていたが、壁に日が差し、暑くな
ってきたために移動することにした。
行った先は井上タワー。本匠では一番新しいエリアである。私はここは2回目。3人ほど入っていたので、すこしはし
のぎやすいのかと思ったら、前高エリアよりさらに暑い。
所見で11-のルートを登ったが照り返す日差しと湿度で下りたときにはずぶ濡れになっていた。その後、木陰でし
ばらく休んだが冷たいお茶を飲んだ先から汗となって出てくる。おそらく、高い湿度が相まって、この夏一番の暑さ
だったのではないだろうか。
さすがに今日はもう登るのを止めようかとも思ったが、今日は持久力トレーニング。そう割り切り、12-のルート
に取り付いてみた。結果は、核心でムーブが読めずテンション。本来なら分かるまでムーブを解くところであるが、
ルート取りが分かりにくいうえ、あまりの暑さ。核心部であっさりとロワーダウンすることにした。


井上タワー。左に回りこんだ場所にも数本ルートが引かれている。
やや左の凹状のところが12-のルート。後から聞いたところによると、
初見では分からないかちホールドを使うのだとか。
なんだそりゃ。である。

相方のビレイの後、しばらく休んで再び先ほどのルートに取り付くことにした。今度は2テンでどうにか抜けること
が出来たが、どだい、今日のような酷暑の日に日差しを背に登れるわけはなく、次回の課題とした。
最後に、仕上げに11+のルートに取り付いたが、これはもう、噴出す汗との闘い。核心を越えた辺りでもうどうで
もよくなり、1テン。ずぶ濡れの回収となった。


コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 大崩&下祝川ボルダー | トップ | 映画鑑賞 「アイガー北壁」 »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

フェース」カテゴリの最新記事