我が家の猫のミーシャがやっと私の言葉が解るようになったらしい。これまでは名前を呼べば振り向いたり、小さく啼いたりはしていたがそれだけだった。もっとも言葉が解るようになったと言っても今のところ「どいて」と「おいで」の2つだけだ。「どいて」はかなり前に覚えたように思う。気が向いたら私の膝や胸に座るのだが、重くなってきたり用事があったりして立とうとする時に「どいて」と言うことを繰り返していたら覚えたようだ。初めのうちは「どいて」と言いながら体を揺すって膝から払い落すようにしていたので、膝から降りるという行動と「どいて」という言葉(音)とがしだいに結びつくようになって、終いには「どいて」と聞くと退くようになったのだろう。動物学で言う条件反応が出来たのではないかと思う。膝の上にいる時だけでなく、いる場所から退くようにもなっている。「どいて」に比べると「おいで」に反応するようになったのはごく最近のことだ。膝を軽く叩きながら「おいで」と言うことを繰り返したが、なかなか反応しない。これはだめかと思っていたら急に反応するようになった。「おいで」と言うとニャアンと啼いて私の顔を見る。もう一度繰り返すと小さく啼いて膝の上に来るようになった。それでも、ストーブの前にいる時には呼んでも無視する。現金なものだ。
妻の生前には犬を2回飼ったことがあるが、どちらも家族の言葉をよく聞き分けた。「おとうさん」「おかあさん」「おにいちゃん」「ケンちゃん」と、家族の皆の呼び名を聞き分けたし、最初の子は妻が朝「おにいちゃんを起こしてらっしゃい」と言うと、階段を駆け上がって長男のベッドに飛び乗って起こしたものだった。他にもいろいろな言葉を聞き分けた。怒ったり、喜んだり、しょげ込んだり、恐れたりと行動や「表情」も豊かだった。
それに比べると猫はこちらの呼びかけにはほとんどと言っていいほど反応しない。名前を呼ぶとちょっとこちらを見るくらいだ。しかし、私に「話しかけて」要求することはある。近くに来てニャアンニャアンと啼くので「何?」と言うと、じっと私を見つめながらまた啼く。独特の啼き声で、これは「餌がないよ」と言っているのだと判るようになった。それ以外に私に話しかけることはない。「猫は何か芸をしますか」と聞かれることがあるが、「ええ、うちの子は賢くてね。出かけるときは手を振りますし、帰ると『お帰りなさい』とお辞儀をします」と言うと、冗談だとすぐにわかって笑われてしまう。それで「犬に比べると猫は何だかアホみたいなところがありますね」と付け加える。しかし、そう言ってしまうと身も蓋もなくて可哀想なので、良く言えば孤高を保っていて、飼い主のことであっても「我関せず焉」というところがあって、そこがまた猫のいいところなのだと猫好きは言うようだ。
ミーシャにはこれ以上言葉を覚えさせるつもりはない。キャットフードを容器に入れるとすぐ首を突っ込んでくるので一応は「待て」と言うがまったく無駄だ。まして「チンチン」や「お手」、「座れ」など、犬ではあるまいしするはずがない。「おいで」と「どいて」だけで十分だし、これも特に訓練しようとしたわけではなかった。よその家の猫には、よく芸をしたり言葉を聞き分ける「賢い」子もいるかも知れないが、ミーシャは今のままでいい。何を考えているのか判らないような顔でも、見ていると心が和む。

妻の生前には犬を2回飼ったことがあるが、どちらも家族の言葉をよく聞き分けた。「おとうさん」「おかあさん」「おにいちゃん」「ケンちゃん」と、家族の皆の呼び名を聞き分けたし、最初の子は妻が朝「おにいちゃんを起こしてらっしゃい」と言うと、階段を駆け上がって長男のベッドに飛び乗って起こしたものだった。他にもいろいろな言葉を聞き分けた。怒ったり、喜んだり、しょげ込んだり、恐れたりと行動や「表情」も豊かだった。
それに比べると猫はこちらの呼びかけにはほとんどと言っていいほど反応しない。名前を呼ぶとちょっとこちらを見るくらいだ。しかし、私に「話しかけて」要求することはある。近くに来てニャアンニャアンと啼くので「何?」と言うと、じっと私を見つめながらまた啼く。独特の啼き声で、これは「餌がないよ」と言っているのだと判るようになった。それ以外に私に話しかけることはない。「猫は何か芸をしますか」と聞かれることがあるが、「ええ、うちの子は賢くてね。出かけるときは手を振りますし、帰ると『お帰りなさい』とお辞儀をします」と言うと、冗談だとすぐにわかって笑われてしまう。それで「犬に比べると猫は何だかアホみたいなところがありますね」と付け加える。しかし、そう言ってしまうと身も蓋もなくて可哀想なので、良く言えば孤高を保っていて、飼い主のことであっても「我関せず焉」というところがあって、そこがまた猫のいいところなのだと猫好きは言うようだ。
ミーシャにはこれ以上言葉を覚えさせるつもりはない。キャットフードを容器に入れるとすぐ首を突っ込んでくるので一応は「待て」と言うがまったく無駄だ。まして「チンチン」や「お手」、「座れ」など、犬ではあるまいしするはずがない。「おいで」と「どいて」だけで十分だし、これも特に訓練しようとしたわけではなかった。よその家の猫には、よく芸をしたり言葉を聞き分ける「賢い」子もいるかも知れないが、ミーシャは今のままでいい。何を考えているのか判らないような顔でも、見ていると心が和む。
