私の名前は漢字一文字だ。とくに珍しいものではなく読み方も間違えられることは少ないが、それでもよく似た字で、名前によく使われる字と間違えられることはあるし、稀に間違いではないが、意外な読み方をされたことはある。自分の名前を間違えられるのは嫌なもので、いつか献本されたことがあったが、贈呈と書かれた名前が間違っていたので、気分を悪くして捨ててしまったことがあった。小さい頃には私は自分の名前が嫌いだった。今ではむしろよく使われていて、「ちゃん」を付けて呼ぶと可愛いとか言われていると聞いたことがあるが、この年で可愛いでもあるまい。
私の父は千二と言った。明治38年の日露戦争のときに生まれた次男であったので、戦時に掛けたらしい。その父は私や2人の弟には1字名前の名をつけた。私も2人の息子には1字の名前をつけている。男の孫が1人いるが、これも1字名前だ。
子どもに命名するときには、以前は意味を重んじて、親の願いを込めたものが少なくなかった。私も息子の1人には、努力すれば到達する、もう1人には刀をとぐように自分を磨くようにという願いを込めた。しかし、今時は意味よりも呼んだり聞いたりしたときの音を中心に命名することが多いようで、特に女の子にはその傾向があるように思う。
毎年その年に生まれた子どもの名前のランキングがいくつかの会社から発表される。2008年の1月1日~11月13日に生まれた赤ちゃん約4万人を対象にしたある企業の調査では次のようになっている。
男の子の1位は大翔(ひろと)で、これは他の会社の調査でも1位になっていて、この3年間連続して1位らしい。大翔を「ひろと」と読ませるのはちょっと無理があるようにも思われ、何か相撲の力士の四股名の読ませ方みたいだ。その後には、②蓮(れん)、③悠斗(ゆうと)、④悠人(ゆうと)、優斗(ゆうと)と続くが、「ゆうと」と言う音が好まれるようだ。以下翔太(しょうた)、大和(やまと)、颯太(そうた)、悠真(ゆうま)、蒼空(そら)となっている。男の子の名前によく見られる男、雄、郎などは流行遅れなのか、翔とか、悠、斗、太が人気らしい。
女の子の1位は、葵(あおい)で、これはNHKの大河ドラマで人気の出た主演女優の名前にあやかったのではないかとの推測もあるようだ。以下は、②結衣(ゆい)、③陽菜(ひな)、④凛(りん)、⑤結愛(ゆあ)、⑥結菜(ゆいな)、⑦美羽(みう)、⑧さくら、⑨心優(みゆ)と七海(ななみ)となっている。心優(みゆ)は読める者はまずいるまい。下のほうには心愛(ここあ)や美空(みく)と言うのがある。心愛(ここあ)にはいささか驚かされるが、この名前でも62人あったそうだ。以前は女の子の名前に普通だった子や代、江、枝は人気がないようだ。私の長男の娘は2人とも子がついている。
私の高校時代の同級生に善右衛門という、村の名主のような名の友人がいた、いくら60年ほど前であっても、このような名前は珍しかった。何かのときに講堂に全学年の生徒が集まって、先生が名前を読み上げたことがあったが、彼の名が呼ばれると爆笑が起こったのはいささかかわいそうだった。年を取った今でも、やはり善右衛門は珍しいだろう。あの頃の顔を今もはっきり思い出すが、どうしているかなと、ふと懐かしくなる。
私よりずっと年長の女性には、あぐりという名があった。これなどはどういう意味だったのだろう。私と同じ世代の女性には、倭文子(しづこ)という名があるが、これは倭文という古代の織物の名称だ。淡紅子(ときこ)という名も見たが、これは鳥の朱鷺(とき)の羽の色、淡紅色(とき色)のことだ。それぞれ古めかしくはあっても、なかなか品のいい名ではないかと思うが、すぐに読めないのに難がある。
名前と言えば、ペットの犬や猫の名も最近は凝ったもの、奇抜なものが多くなったようだ。かつては犬ならポチとかコロ、猫ならタマとかミー子などというのが代表的な名だったが、今ではほとんどないだろう。単なる飼い犬や飼い猫から家族扱いのペットに昇格すると、それなりの命名になるのだろう。
名は体を表すと言うが、私の名前の文字の意味は、「あきらか」とか、「けがれがなくて明るい」ということで、これはいささか顧みて気恥ずかしいが、せっかく親からもらった名だ。後もう少し大切にしていこう。
私の父は千二と言った。明治38年の日露戦争のときに生まれた次男であったので、戦時に掛けたらしい。その父は私や2人の弟には1字名前の名をつけた。私も2人の息子には1字の名前をつけている。男の孫が1人いるが、これも1字名前だ。
子どもに命名するときには、以前は意味を重んじて、親の願いを込めたものが少なくなかった。私も息子の1人には、努力すれば到達する、もう1人には刀をとぐように自分を磨くようにという願いを込めた。しかし、今時は意味よりも呼んだり聞いたりしたときの音を中心に命名することが多いようで、特に女の子にはその傾向があるように思う。
毎年その年に生まれた子どもの名前のランキングがいくつかの会社から発表される。2008年の1月1日~11月13日に生まれた赤ちゃん約4万人を対象にしたある企業の調査では次のようになっている。
男の子の1位は大翔(ひろと)で、これは他の会社の調査でも1位になっていて、この3年間連続して1位らしい。大翔を「ひろと」と読ませるのはちょっと無理があるようにも思われ、何か相撲の力士の四股名の読ませ方みたいだ。その後には、②蓮(れん)、③悠斗(ゆうと)、④悠人(ゆうと)、優斗(ゆうと)と続くが、「ゆうと」と言う音が好まれるようだ。以下翔太(しょうた)、大和(やまと)、颯太(そうた)、悠真(ゆうま)、蒼空(そら)となっている。男の子の名前によく見られる男、雄、郎などは流行遅れなのか、翔とか、悠、斗、太が人気らしい。
女の子の1位は、葵(あおい)で、これはNHKの大河ドラマで人気の出た主演女優の名前にあやかったのではないかとの推測もあるようだ。以下は、②結衣(ゆい)、③陽菜(ひな)、④凛(りん)、⑤結愛(ゆあ)、⑥結菜(ゆいな)、⑦美羽(みう)、⑧さくら、⑨心優(みゆ)と七海(ななみ)となっている。心優(みゆ)は読める者はまずいるまい。下のほうには心愛(ここあ)や美空(みく)と言うのがある。心愛(ここあ)にはいささか驚かされるが、この名前でも62人あったそうだ。以前は女の子の名前に普通だった子や代、江、枝は人気がないようだ。私の長男の娘は2人とも子がついている。
私の高校時代の同級生に善右衛門という、村の名主のような名の友人がいた、いくら60年ほど前であっても、このような名前は珍しかった。何かのときに講堂に全学年の生徒が集まって、先生が名前を読み上げたことがあったが、彼の名が呼ばれると爆笑が起こったのはいささかかわいそうだった。年を取った今でも、やはり善右衛門は珍しいだろう。あの頃の顔を今もはっきり思い出すが、どうしているかなと、ふと懐かしくなる。
私よりずっと年長の女性には、あぐりという名があった。これなどはどういう意味だったのだろう。私と同じ世代の女性には、倭文子(しづこ)という名があるが、これは倭文という古代の織物の名称だ。淡紅子(ときこ)という名も見たが、これは鳥の朱鷺(とき)の羽の色、淡紅色(とき色)のことだ。それぞれ古めかしくはあっても、なかなか品のいい名ではないかと思うが、すぐに読めないのに難がある。
名前と言えば、ペットの犬や猫の名も最近は凝ったもの、奇抜なものが多くなったようだ。かつては犬ならポチとかコロ、猫ならタマとかミー子などというのが代表的な名だったが、今ではほとんどないだろう。単なる飼い犬や飼い猫から家族扱いのペットに昇格すると、それなりの命名になるのだろう。
名は体を表すと言うが、私の名前の文字の意味は、「あきらか」とか、「けがれがなくて明るい」ということで、これはいささか顧みて気恥ずかしいが、せっかく親からもらった名だ。後もう少し大切にしていこう。