大阪市営の地下鉄で朝、54歳の男性助役が駅長室内でたばこを吸ったため、火災警報機が作動して上下線4本に最大1分の遅れが生じた。市営地下鉄では2月にもたばこの火の不始末とみられる火災で梅田駅の倉庫が全焼し、交通局は各駅に全面喫煙禁止の徹底を通知したばかりで、この助役はそれを無視したことになる。
54歳という年齢と、助役という役職を考えると、どうにも愚かで軽率な行為だと思う。橋下市長は市職員やその組合を「敵」のようにして攻撃し、市民の支持も得ているようだから、そのような規律違反行為をするのは、市長の姿勢に火に油を注ぐようなもので本当に愚劣だと思う。
インタネットなどで見るともちろん市長は「激怒」し、「君が代条例で、起立をしない職員とある意味同様に扱う。今までの事例やバランスを考えずに厳罰でいく」として、「懲戒免職も辞さない」考えらしい。市長は「裁判も辞さない。免職は法的に問題があるかもしれないが、司法決着をすればよい」と語ったという。
「激怒」とか「号泣」というのはやや安っぽいマスコミの常套語だが、ツイッターなどで見るこの市長は相当感情が抑制できにくい性格らしいから、助役に対して「激怒」したのは分かるような気がする。しかし懲戒ということ、まして懲戒免職となると、その者の生活のたずきを奪ってしまうことになるのだから、慎重でなければならない。懲戒に当たってはしかるべき機関が慎重に審議するべきで、市長が「今までの事例やバランスを考えずに厳罰でいく」と怒りにまかせて口にすべきことではないだろう。そこにこの市長の「民意」を得たのだから何でもできるという驕りがあるように感じる。
中国の伝説上の神獣である龍には81枚の鱗があり、その顎の下に1枚だけ逆さに生えている鱗があって、これを「逆鱗」(げきりん)と言う。龍はこの喉元の「逆鱗」に触れられることを非常に嫌い、これに触られた場合には激高し、触れた者を即座に殺すとされている。ここから「逆鱗」は触れてはならないものを表現する言葉となり、帝王(主君)の激怒を呼ぶような行為を指して、「逆鱗にふれる」と比喩表現されるようになった。今では、「逆鱗に触れる」として広く目上の人物の激怒を買う行為を指すようになり、また「逆鱗」が目上の人物の怒りそのものを指す言葉として用いられることもある。
この助役はまさに橋下市長の逆鱗に触れたのであり、これまでの言動を考えると、この市長には逆鱗が1枚どころか何枚もあるのではないか。この橋下市長、市長選で100%の市民が信任を与えたかのように怖いもの知らずで、選挙で選ばれた市民の代表と言うよりも、気分は帝王だという感じがする。これからもタツノオトシゴが成り上がったようなこの龍王の逆鱗に触れる者は出てくるだろう。阿諛追従の徒に囲まれた権力者の行為は止めどもなく広がっていく怖いものだと思う。
(朝の散歩から)
やっと桜が咲いた。新学年の季節。新1年生も交えた小学生の集団登校の列が朝の光を浴びて清々しく可愛い。