蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

花束みたいな恋をした

2023年07月26日 | 映画の感想

花束みたいな恋をした

大学生の八谷絹(有村架純)と山音麦(菅田将暉)は2015年に明大前駅で知り合い、好きな作家など嗜好が一致したことから付き合い始め、やがて調布の多摩川近くのアパートで同棲する。イラストレータを目指していた麦が就職したころから2人の関係が悪化し始め・・・という話。

「怪物」を見て、脚本の坂元裕ニの他の作品も見てみたくなって借りてきた。

穂村弘、今村夏子、柴崎友香、滝口悠生、宝石の国、AKIRA、ゴールデンカムイ、押井守・・・絹と麦が好きな作家や作品。今時の若者がこんなもの読んだりするのか?と思ってしまった。なぜかというと、私の好みとピッタリと一致しているから。

しかし、本作は大ヒットしたらしいので、こうした嗜好に共感できる人もそれなりにいるのだろう。というか、自分ではマニアックと思っていたのに、実はメインストリームに過ぎなかっただけかも。

いやいや、自分の子供や会社の若者がこんな傾向の本やマンガを読んでいるのを見たことないぞ・・・

仕事に疲れ果てた麦が唯一の息抜きとしていたのがパズドラで、絹が(かつて2人が熱中していた)ゼルダの話を振っても反応しない場面とか、就職した麦が書店で小説に見向きもせず自己啓発書ばかりに興味を示す場面なんかが、自分がマニアックだと思っている(私のような)人にはたまらないのかもしれない。

京王は映画などのロケに協力的(というか最近まで京王以外の電鉄会社は駅などの鉄道施設内の撮影を許可しなかったらしい)なのは有名だが、本作でも舞台になるのは明大前と調布。登場人物が持っている本の書店カバーが調布が本拠の書店の特徴的なデザインだったりして、細かいところにも凝っているなあ、と思えた。2人が過ごす調布のアパートの内装や本棚もいい感じだった。

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もう別れてもいいですか

2023年07月26日 | 本の感想

もう別れてもいいですか(垣谷美雨 中央公論新社)

50代の原田澄子は、欠礼はがきで知人の夫が死んだと知って、おもわず「羨ましい」と呟いてしまうほど、夫が嫌いだった。2人の娘は独立して離婚に障害はないが、経済的な不安から踏み切れない。周囲は、暴力、浮気、浪費のいずれでもないのに離婚するのはおかしい、などというが・・・という話。

澄子の夫は家事は一切しないし、澄子が泊まりがけで旅行に行くのを簡単には許可しない。今時そんな夫婦いるの?などと思う。しかし、著者の作品はリサーチに基づいて書かれている感じがするし、何より共感を呼ばないとこんなに売れっ子にはなれないだろうから、本書を読んで「ああ、ウチと全く同じ」と思う妻が多いのかもしれない。

新聞の人生相談コーナーをよく読むのだが、今時信じられないような封建的?風習(嫁姑関係とか・・・今時親と同居してしていることすら珍しいような気がするのだが、そうでもないのだろうか)とかについての相談が結構多い。「いくらなんでもこれは釣りだろ」と思ってしまうのだが、全国紙でこの欄を担当する編集者は毎日投書の山と格闘しているのだろうから、きっと作り話は見破れるはずだ。だから多くは本当なのだろうし、人生相談のネタみたいな本書のような夫婦もたくさん実在するのかもしれない。

本書は、この上ないほどのハッピーエンドで、これを読んだら澄子と似たような立場の人は「ああ、私も今すぐ家を出て離婚しよう」と思ってしまうんじゃないか、と心配?になる。

澄子の夫と同じような立場(実は私もそうだが)の人の方こそ本書を読むべきかもしれない。「あなたの妻もきっとこんな風に思っていますよ」と知るために。

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