蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

スティルウォーター

2022年06月14日 | 映画の感想
スティルウォーター

ビル・ベイカー(マット・デイモン)はオクラホマ州の油田リグで働いていたが、失業して日雇い仕事でくいつないでいる。娘のアリソン(アビゲイル・ブレスリン)はマルセイユに留学中にレズビアンの恋人を殺害した罪で現地で収監されていた。
ビルはマルセイユに渡って、無罪を主張する娘を支援するため、娘が真犯人だというアキームという男を探す。
フランス語がままならないビルは苦戦するが、たまたま知り合った役者のヴィルジニー(カミーユ・コッタン)の部屋で暮らすことになる・・・という話。

それほど見る前の期待値が高くなかったせいもあるのか、久々に「見逃さないでよかった」と思えた秀作。
入り組んだ筋立てだが、説明しすぎないのに理解しやすい優れた脚本だった。

スティルウォーターというのはビルの故郷の地名なのだが、映画のほとんどはマルセイユが舞台で、なぜこれがタイトルなのかは終盤になるまでわからない。しかし、終盤に呟かれるこの言葉によって、廻り舞台が180度回転するように物語の情景が一変してしまうという展開がなんとも痛快。

そういう意味でミステリというかサスペンスとしても良い出来なのだが、本作のテーマは別にある。
異国の地で懸命に手がかりを探すビルに対して実の娘のアリソンはとても冷たい、というか終始打算的で自分のことしか考えていない。
対して赤の他人でビルの素性すらよく知らないヴィルジニーとその娘マヤとは心が通じ合い、リスクを冒してビルを助けてくれる。
肉親の絆とは?人間関係の本質とは?そういったことを問いかけてくる内容だったと思う。
ラストシーンにおけるビルの独白が、とてももの悲しい。

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