「物理学者、ゴミと闘う」 広瀬立成著 (講談社現代新書) 定価:720円
【この本を読んだ理由】
本のタイトルの“不思議な組み合わせ”にひかれて!
【読後感】
著者は学者先生。
近所の主婦に「いっしょに闘ってほしいんです!」と声をかけられたのが、ゴミと闘うきっかけになったとか。
著者は、専門分野の物理学の3つの法則を用いて、
“基本法則は語る”と題して、ゴミと地球環境について纏めている(本文p.174参照)。
つまり、物理学の3法則
「質量保存の法則」
「エネルギー保存の法則」
「エントロピー増大の法則」
によって、地球環境の基本的なしくみが、包括的に理解できることを述べている。
すなわち、自然物質は、動物、植物、菌類のあいだの物質循環(自然サイクル)によって持続性が保たれていること。
一方、地球上でのあらゆる活動によって増大したエントロピーは、熱エントロピーとして水の循環(蒸発、液化等)によって宇宙空間に廃棄され、物質エントロピーとして生命圏に廃棄される。
一方、人工物質は、リサイクルによって、基本的には持続性を持ち得なく、リサイクル過程で、熱エントロピーとともに物質エントロピー(炭酸ガス、有毒物質、放射性廃棄物など)が廃棄され、それが物質循環を破壊するという。
このまとめだけをみると、むずかしそうであるが、中身はもうちょっと分かり易く説明されている。
そして、著者は大量生産、大量消費、大量廃棄の時代から、「もったいない文明」への転換を提示している。
ゴミ焼却による膨大な費用と環境問題について、
「Think globally,act locally.(地球規模で考え、足元から行動する)」
ゴミゼロ社会をめざし、「もったいない社会」へソフトランディングをすることを提唱している。
ゴミと地球の環境問題について、あらためて考えさせられる一冊であった。