この度SO-Colorをご覧になって共に旅したKinueさんから短歌作品が送られてまいりました。
「北海道を旅して」 Kinue Mitugi
1日目 羽田空港・新千歳空港・富良野・美瑛・層雲峡温泉(泊)
蕎麦の咲き白き美瑛の丘陵にとんがり屋根の時計台見ゆ
走る窓時の間見ゆる沿道の七竈の実一色ならず
積雪に道幅示す標識の矢印高く路肩に続く
丈高く反魂草(ハンゴンソウ)と虎杖(イタドリ)の続く彩り北国の道
2日目 層雲峡・旭山動物園・能取湖・網走湖温泉(泊)
霧の中ロープウェイの真下には草食む鹿の白き尻見ゆ
円柱をくぐる白熊待ち居るに四肢を伸ばして居眠りしをり
能取湖に向かふ道路は囚人の涙のありしと案内を聴く
車中より鎖塚に向き手を合はす囚人道路に恵み受くれば
囚人道路と呼ばるる路肩に祀られし鎖塚を車窓に見過ぐ
オホーツクの潮の匂へる能取湖に広く色づく珊瑚草見る
防寒のコートと濡れたタオル借りシバレ体験する流氷館
ガイド嬢は本当のような嘘を交え長き移動の車中笑いし
3日目 知床クルーズ・知床五湖・摩周湖・硫黄山・川湯温泉(泊)
双美の滝を間近に見上ぐ階の涼しき風に草の穂そよぐ
知床の海面近く虹架かり漁船一艘その中をゆく
知床の海に霧雨幾度も降り止み虹を架けては消えて
二湖巡る木道沿いの山葡萄 熊の爪痕を蝦夷松の幹に
夏と秋の花共に咲く道東の九月の日差しじりじりと射す
期待せし摩周湖見えず濃き霧に辺り閉ざされ瞬時闇かと
人影の微かに動く摩周湖に諦め見つむ樹雨に濡れをり
硫黄山の噴煙近くに育つとふ蝦夷白躑躅見たしと思ふ
4日目 野付半島・オンネトー・十勝川温泉(泊)
島民の恋ふる故郷は間近にて年月口惜し国後三山
風化せし椴松白く立ちしまま砂嘴の沈下は密かに続く
侵食に命の果てし椴松の白き樹骸は泥土に沈む
侵食の続く原生花園には白き吾亦紅 闌て揺れをり
椴松の枯れし泥土に珊瑚草色づくも海の風音寂し
地平線三六〇度見渡せる多和平の丘に綿羊遊ぶ
峠にて見放くる釧路湿原の広野は青く稜線霞む
雌阿寒岳の湖面に映る影薄れ藍深みゆくオンネトーの夕
5日目 帯広、六花亭・旧幸福駅・新千歳空港
旅途中に迎えし友の誕生祝い 日付け切符を贈る幸福駅