十五夜
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十五夜の月を眺める。(月齢)
40代初めの頃、Los Angelesに40余日間滞在。そのときに 夫の研究室の(Professor Kelly) Bossのお宅に招かれて家族5人でお邪魔した。
家族で、昼間はマリブ(?と言ったか)の海で水着に替えて波と遊び、海岸でBossの奥様の手作り料理でパーティ。
私たちの周りには日本の海ほどの人も、まばらにしか見えなかったので、まるで自宅の庭先でバーベキューを楽しみ、遊んでいるような錯覚。
西瓜を小さなボール型にくりぬいたものやパイナップル、その他の果物をふんだんに使ってフルーツポンチのデザートも美味しかった。紅い実の部分が空になった大きな西瓜を器にして、外のテーブルに出てきた野趣あふれた雰囲気も忘れられない思い出として残っている。勿論小分けのガラス器は銘々に準備されていたが。
中学3年生の娘の受験だからと夫の1年間の在外研究員としての赴任に、家族ではついて行かなかった。そのため夏休みを利用して夫の陣中見舞いを兼ねて渡米したのだ。
その時の月! 高く澄んだ空に日本で見たと同じ月が群青色の空を、月が独り占めをしているように輝いて、まるで女王さまのようだった。
ここはカリフォルニア。Bossの家は海岸線を見下ろす高台で、間接照明の薄明かりのリビングルームから、ちょうど歌で親しんでいた“コロラドの月”を連想させるような月がとてもくっきりと見えていた。とっても綺麗な月だった。“コロラドの月”を小さく口ずさみ、そしてさらに…無謀にも、急に私は「かぐやひめ」の物語を披露したくなった。
始めたのはいいけれど、なかなか大変…! 今はとてもそんな向こう見ずな勇気はない。結局は途中で諦めてしまった。とても私の手には負えない……、日本人の心を伝えるのが無理に思えた。夫は助けてもくれずに、ただ、たどたどしい私の話の展開を見つめていただけだった。聞いていたのではなく、私の懸命な顔をにこにこと見ていたのだった。
月を見ると色々なことが思い浮かんできて、なぜか心静かな落ち着きと安定した気持ちで仰ぎ見て、長い時間眺めてしまう。
9月16日(撮影)の月は、クレーターがよく見えて「兎の餅つき」をしているように見える。