9月2日の日経日曜版に奈良女子大学記念館のことが紹介されていて、洋館好きの私は気になっていました。大学HPを見ると、旅行初日がちょうど公開日にあたっていたので、午後2時半からのガイドツアーを予約しました。
正門から続くアプローチの向うに、淡いグリーンが印象的な美しい洋館が見えます。奈良女子高等師範学校(現奈良女子大学)が明治41(1908)年に創立した時から本館として使用していた建物で、現在は重要文化財に指定され、記念館として保存されています。建築は木の柱を装飾的に見せるハーフティンバー様式が取り入れられています。
1階は展示室となっていて、初期の頃の貴重な資料を見ることができました。写真は化学実験の様子。女学校としてはめずらしく理系の学部がありました。生徒たちは白衣ではなく割烹着を着ています。着物は質素に、髪型は”女高師まげ”と決められていました。男性教官はフロックコートや裁判官の法衣のような服を着ていたそうです。
別の展示室には、生物学の授業で使った貴重な動物標本がありました。学校は全寮制で、生徒たちは団体生活を通して切磋琢磨して助け合い、自学自修の精神から清掃や炊事も自分たちでこなしたそうです。
2階は講堂となっていて、今も大学院の入学・卒業式やコンサートなどに使われているそうです。長椅子も師範学校時代から使っているものです。檀上中央にあるのは奉安所。戦前の学校では、国家祝祭日に御真影を掲げ、校長が教育勅語を奉読しました。御真影と教育勅語は、ふだんは(後述する)奉安殿に保管されていたそうです。
天井中央にある花形装飾はスリットとなっていて、熱気を屋根に逃がす工夫がされています。シャンデリアも壁際の灯りも今では手に入らない貴重な材料と技術で作られているそうです。
前方にはピアノが2台。ひとつはスタインウェイで、もうひとつは”百年ピアノ”。創立当初に購入された山葉(ヤマハ)のピアノです。脚や楽譜台に華やかな装飾が施されていました。鍵盤のキーの数は今の88鍵より若干少ないです。講堂を改修する時に倉庫に保管されたまま忘れ去られていたのを近年になって発見。修復されてこの場所にもどりました。
こちらは正門の横にある守衛室です。正門と守衛室も創立時に建てられた明治の建築で、重要文化財となっています。今も現役で使われているのがすてきですね。
守衛室の近くにある奉安殿。戦前、御真影と教育勅語を納めていた建物です。戦後ほとんどの学校で奉安殿が解体される中、研究用のショウジョウバエの飼育に使うとGHQと交渉して奇跡的に残った貴重な歴史遺産です。
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大学近くのすてきな珈琲店 Cafe CROCO さんでゆっくり休憩した後、江戸時代の町家が並ぶ景観地区”ならまち”を散策しました。
こんな感じの趣のある建物が点在し、最近は町家の建物をそのまま生かしたカフェやレストラン、雑貨屋さんなどが増えています。味わいがあってすてきだなーと近づくと、登録有形文化財となっているお家もそこここにありました。
こちらは豆腐料理のこんどうさん。築180年の建物は登録有形文化財となっています。ならまちのお家の軒先には、どこもお人形の飾りがぶら下がっています。これは「身代わり申」(みがわりさる)といって、江戸時代に広まった庚申信仰に基づく魔除けのお守りだそうです。
レストランやクラフトショップが集まった一画。入り組んだ小路の風景が絵になります。