トニー賞6部門を受賞した、ブロードウェイミュージカルの映画化です。
ディア・エヴァン・ハンセン (Dear Evan Hansen)
ミュージカルが大好きな私ですが、正直予告を見た時にはあまりピンとこなかったのです。でも、舞台版で主人公のエヴァンを演じ、本作でも主演しているベン・プラットの歌がすばらしいと聞いて、是非聴きたい!と見に行ってきました。
最近のミュージカルは、先日の「チック、チック...ブーン!」もそうですが、歌い踊るエンターテイメント!といった作品ではなく、内省的な作品が増えているような気がします。
誰もが心の孤独を抱えている、今の時代を映した青春物語。すべてがまるく収まるハッピーエンディングではなく、少しほろ苦さのあるエンディングが、リアリティが感じられてよかったです。
ベン・プラットの歌もすばらしかった!
一見、気が弱そうにみえるベンですが、彼が歌い始めると周りの空気がしんと静まりかえるのを感じました。ジェニファー・ハドソンのように、迫力ある歌声で周囲を圧倒する、というのとはちょっと違うのですが
聴く者の心をふるわせて、ぐっと引き寄せられるような感覚。彼の歌声もですが、歌詞もすばらしくて、特に前半は気がつけば自然と涙がこぼれ落ちていました。
孤独だった少年が、成り行きからしかたなくついた小さな嘘がきっかけで、新しい家族に迎え入れられ、学校で人気者になり、ガールフレンドもできて、大学進学への援助の話まで出てきます。
そうはいっても嘘は嘘。嘘はいつかは必ずほころび、しかも現代のネット社会では、よい話も、悪い話も、あっという間に世界をかけめぐる。
傍から見るとひとつの曇りなく、幸せそうに見える家庭も、実はいろいろな問題を抱えていることもわかってきます。
そうした中、地に足をつけて、しっかり自分の道を歩いていく主人公が誇らしく、前向きな気持ちになれました。舞台版と少し変えてあるという後日譚も、温かい余韻が感じられてとてもよかったです。