ベネディクト・カンバーバッチ主演、1920年代のアメリカ・モンタナ州を舞台にした、サスペンス仕立てのヒューマンドラマです。
パワー・オブ・ザ・ドッグ (The Power of the Dog)
Netflix配信で気になっていた本作が、劇場で限定公開されると知って吉祥寺のUplinkまで遠征して見に行ってきました。私にとって間違いなく今年のベストとなる作品。見た後もすぐに席を立てないくらいに圧倒されました。
ベネディクト・カンバーバッチが「モーリタリアン 黒塗りの記録」に続いて本作でもアメリカ人を演じています。ものすごく優秀で頭が切れるけれど、意地悪でマッチョな農場主。舞台は1920年代のモンタナです。(ロケ地は監督の母国であるニュージーランド)
前知識なく見に行ったので、最初はパズルのピースのように散りばめられたひとつひとつのエピソードが、やがてどのようにつながっていくのか、頭の中ではいろいろな想像が渦巻いていました。それはまるでチェスのようでもあり、ジグソーパズルのようでもあり。
全体的に静かに物語は展開していきますが、決してたいくつすることはありません。主要な登場人物4人による、ひりひりするような心理的かけひき。みなぎる緊張感に心を奪われ、目はスクリーンにくぎ付けに。そして魔法にかけられたように動けなくなりました。
映画が終わると、最初の謎めいたセリフは結末につながっていたのだと気づいてはっとしました。そして、映画全体が壮大な回文になっていたようにも感じられました。
カンバーバッチの他、キルステン・ダンスト、ジェシー・プレモンス、ローズの息子を演じたコディ・スミット=マクフィ、みんなすばらしかった。(キルステン・ダンストとジェシー・プレモンスは、実生活でも夫婦だったのですね。意外でした。)
何を書いてもネタばれになってしまうので、これ以上は書かないでおきます。普通だったらみんなにお勧めしたいところですが、この作品に関していえば、独り占めして誰にも教えたくない気分になるのが不思議です。
トーマス・サヴェージによる原作もきっと傑作に違いないので、いずれ読みたいです。