招待券をいただいて、東京都現代美術館で開催中の「デイヴィッド・ホックニー展」を見に行ってまいりました。
イギリス出身の現代の画家、デイヴィッド・ホックニーの大規模個展です。
本展では、イギリス各地やロサンゼルスで制作された代表作の数々のほか、近年制作された風景画の「春の到来」シリーズ、コロナ禍のロックダウン中に、iPadを使って描いたという実験的作品など、約120点が展示されています。
ポップで明るい代表作品の数々のほか、あっと驚く表現手法で制作された大型の作品など、どれも好奇心を刺激して楽しめました。ポスターに描かれているのは「春の到来 イースト・ヨークシャー、ウォルドゲート 2011年」の一部ですが、この作品
全体は、32枚のカンヴァスを組み合わせた、幅10m × 高さ3.5m という大型の油彩画です。そもそもカンヴァスを組み合わせて大きな作品を作る、という発想にびっくり。運ぶ時は分けて梱包し、展示先で並べればよいのですから合理的ですね。
No. 118、2020年3月16日「春の到来 2020年」より
展示室に入って最初に出迎えてくれたのがこの作品です。2020年の春といえば、ちょうどコロナが広がり始めた頃ですが、それを微塵と感じさせない明るさに心が洗われました。そういえば、私もコロナで家に4日間籠城?した後に目にした春の花々に
心を洗われたことを思い出しました。(コチラの記事) 水仙の葉の重なり合いは、近くで見ると尾形光琳の「燕子花図屏風」を思い起こしました。
「自画像、2021年12月10日」
そしてこちらが自画像。おしゃれで、お茶目なおじさまですね。エルトン・ジョンにもちょっぴり似ているような...。
「スプリンクラー」 1967
しゅんしゅんと回るお庭のスプリンクラーはアメリカ時代の懐かしい思い出ですが、家の作りは窓が大きい西海岸スタイルです。バービーランドのようなどこか作り物めいた風景が、いかにもアメリカらしい。
2022年6月25日、「額に入った」花を見る
画面で見ると小さいですが、約5.2m × 3m ある大きな作品です。絵の中に額縁の絵というと、私はマティスを思い浮かべますが、これだけ並ぶと圧巻です。
「ウォーター近郊の大きな木々またはポスト写真時代の戸外制作」 2007
こちらも約5m × 12m の大きな作品ですが、縦5枚、横10枚、なんと50枚のカンヴァスを組み合わせているのです。メイキング動画がギャラリーで公開されていました。
Making Bigger Trees near Warter, 2007
ラストは、コロナ下に iPad で描いた絵画をつなぎあわせて構成した全長 90m の作品です。
「ノルマンディの12ヶ月」(部分) 2020-21年
広いギャラリーに帯となって続く壮大な絵巻に圧倒されました。(写真撮影ができました)
2019年にコロナを逃れてフランス、ノルマンディ地方に移り住んだホックニーは、世界中の都市がひっそりと静まり返っている間、周辺の自然や季節の移ろいを見つめ続けました。そこには、かけがえのない豊かな風景が広がっていました。
それにしても、こんな風に iPad でちゃちゃっと (ではないかもしれませんが) 身近な風景や旅先の景色が描けたらどんなに楽しいでしょう。御年80歳を越えるおじいちゃまに、危機を乗り越える力、新しいものにチャレンジする意欲を学びました。