(写真:世田谷区役所第2庁舎・議場と議員控室がある建物です)
決算認定における「せたがや政策会議」の意見を以下に貼り付けます。
少々長いですが、お時間があったら読んで下さい。
(今回の意見開陳者は、
おおば正明議員でした)
平成18年度各会計歳入歳出決算の認定に、せたがや政策会議として
賛成の意見を述べます。
既に、個々の問題については決算委員会の中で述べました。ここでは
全体的な視点から触れます。
昨年も申し上げたように、私どもが目にする分厚い決算書は、ある時点
で切り取られた静止画像の集積にすぎません。しかし、本当の行政の
成果は84万区民が日々刻々と生活している動画・映像の中にこそあり
ます。
もとより平成18年度決算はそれだけで完結しているのではなく、それ
以前の決算との連続性、因果関係の中で検証されるべきものであり
ます。
ともすると、単年度会計のために、一年が終わると、何もかもお疲れ
さまで、人も気分も変わって、ゼロから再出発ということに、役所で
は、なるかも知れませんが、区民の営みは年度の区切りと関係なく
日々続いております。その意味で、平成18年度決算の進化した形が
20年度予算となって現れることを強く望むとともに、答弁においても
さらなる進化を期待いたします。
さて、今回の決算認定は、今も申し上げましたように、制度上の一応
の区切りではありますが、せたがや政策会議としましては、単に18年
度決算を審議するにとどまらず、決算書にはあらわれにくい問題に
ついても積極的に取り上げ、議論をすることに努めて参りました。
一つは組織体制の問題について、これは昨年までは、個々の管理職
がどれほど基本に忠実に、そして丁寧に、仕事をしているかということ
を、物品管理から記録の保存やその点検に至るまで、主にヒトの面
から議論してきたわけですが、今回はハード面、まさしく建物の問題点
を指摘いたしました。
本庁舎における災害対策本部機能の問題であります。
この件に関しては、繰り返しはいたしませんが、個々の管理職がどれ
ほど優秀な仕事ぶりであっても、その前提となる建物や機器類、あるい
は備蓄食糧において決定的な問題があっては、その持てる機能を発揮
できないのではないか、このことを指摘いたしました。
この問題は、単年度の決算および予算では到底、解決できないことは
皆様ご案内の通りだと思います。今後の具体的な取り組みを強く望むと
ともに、区長にあっては是非、区民に呼びかけるような仕組み、これは
従来から申し上げている世田谷区の広報戦略としての一環として捉えて
いただきたいのですが、広く区民の皆さんの意見を汲み上げる態勢が
必要であると申し添えておきます。
次に、出張所改革について、これは行革の一環として行われていること
は承知しております。加えて行革が痛みを伴うことも理解している所で
あります。
しかしながら区の認識では、いかなる痛みも無いがごとき答弁がまかり
通っていることについては、せたがや政策会議としては深い懸念を持た
ざるを得ません。
やり切らないことには成果が上がらないということはあります。それは
昔からよく言う、お米の炊き方のようなもので、「始めちょろちょろ中
ぱっぱ赤子泣くとも蓋取るな」という具合で、途中で蓋をとったら決し
てうまく炊けないということであります。
そこから、何を聞かれても蓋をとらないぞという、答弁の気概はわかり
ますが、それでは永遠に蓋を開けないのでしょうか。いずれは蓋を
あける時が来るのです。そのことを見据えた展望というものについて
考えなければ、せっかくのご飯もスミになってしまいます。
出張所改革において事務手続き面における成果は上がっても、究極的
には区民の最前線にあるのは機械だけではなく、必ず人間が必要であ
る、ということに、たどりつくわけです。災害対策を考慮すれば、なお
のこと出張所の機能面の拡充は不可避であります。
これは住民と区役所の接点というものをどう捉えるか、という角度から
の提言であると受け止めて頂きたいと考えます。
これも具体的なことは委員会で述べた通り、であり、繰り返しません
が、こんにち、インスタントラーメンにおいても地域によって味を変え
なくては売れない時代であり、またハンバーガーにおいても地域価格と
いうものが設定されている時代であります。
地方分権が進むなか、同じ世田谷区内においても、同一行政サービス
だけでよいのか、公平、公正だけを金科玉条の御旗に立てて、結果
として誰も望まない、役に立たないサービスをただ単に見過ごして
いるということはないのか改めて検討することを望みます。
次に、行政の範囲というものについても私たちは共通のテーマとして
触れております。自殺予防というのは新たに行政が取り組む範囲である
ことは続けて述べさせていただいております。
一方で、際限のない延命操作というものについて疑問を呈するとともに、
強制的な福祉というのでしょうか、或いは押しつけ的な福祉というもの
が存在しないか、むしろ困っている福祉というものはないか、という
非常にデリケートな部分についても議論しました。
私たちは人生の終わりということを避けることはできません。このこと
は医療、介護と密接に関連することであります。
さらに言えば、冒頭で述べました、区役所の災害対策本部機能の改善が
図られ、また出張所における機能充実が達成されたとしても、同時並行
的に考えなければならないのは、この災害時の救急救命医療の部分で
あります。平時においても医療崩壊が叫ばれる中、災害時その何万倍の
負荷がかかることは容易に想像できることです。
どうして医療現場から医師が立ち去っていくのか、また介護現場でも
同じでありますが、それは単に経済的な側面に限られたことではありま
せん。医療と患者、治療する者と治療を受ける者との関係性の問題が横
たわっているのであります。私たちはこの問題についても現場を抱えて
いる地元の議員として光をあてていく必要があると考えています。
その意味でも国民皆保険制度は守り続けなければならない制度であり、
またその価値を区民に向かって周知させる必要があると考えます。
先頃、封切られたマイケル・ムーア監督の「シッコ」はいかにアメリカ
の医療そして、映画では取り上げられていませんでしたが介護も同じ
ことですが、いかにひどいことになっているか、ああなってはいかんだ
ろうと、誰しもが感じると思います。
ただし映画の中で、医療費無料のように描かれていたキューバは昨日
の朝日新聞によれば、実際には診療所に医者がいないということであ
り、また同じように描かれていたイギリスでも、入院待ち患者が
100万人を超え、手術可能と判断された肺ガン患者の2割は手術を待つ
間に手遅れになるという実態が報道されております。
医療の問題をどう世田谷区として取り扱うか、所管外だからと84万
区民を擁する自治体が言ってられるでしょうか。医療と患者、治療
する者と治療を受ける者との関係性に行政が踏み込まざるをえない
時期に来ているのではないかと考えております。
最後に昨今の東京23区の財政環境は異常な状態にあると思います。
すでに報道にあるように、政府・与党は大都市圏と地方の財政格差
を縮小するため、事業税を含む地方法人二税の配分見直しを検討
しているといわれております。
このことは世田谷区にあっても財政基盤を根底から覆されるかも
しれない大変な事態であります。私たちはこのような動きを認識
しながらも自主財源の獲得、また区民税収入の構造的改善に取り
組まなければなりません。
このことを最後に申し上げて、せたがや政策会議の賛成意見とします。