@「人助け」言葉表現は簡単「言うは易し行うは難しい」。本書の宗因の人助けはたとえ悪人でも双方に「なるほど」と言わせる「生かせる処置」判断には思わず唸る。近年、自己主義者が多くなり特に「人助け」より「自分」が中心で他人の事など二の次だ、という世間になった。それは公然と政治家の「利己主義」が横行し、「罪の意識が全くない」発言と行動になっているからだと、思う。国民に人として率先し善例を見せなければならない政治家がこれだと「正直者は損する」時代に戻っている気がする。面白い言葉が「私は様々なことをしてきたつもりだが、まだ、一度も死んだことがない。死とはどのようなものか、それを自分で確かめられるものを楽しみにしているわい」
『偸盗の夜』澤田ふじこ
「概要」父を惨殺した盗賊とともに闇へ消えた母の行方は? それから十一年、ある祝言が執り行われた夜、宗因が事件の真相に辿りつく!!
「冬の鼓」
盗賊に父を殺害され母はその盗賊と共に消えた、残された娘、お琴には大店から嫁の話しが舞い込む。だが、母の行方を知るまで拒否。そんな中に左官屋で働く男と好意な関係となるがそれに嫉妬した大店の息子が暴行を決行。宗因はその暴行を止めせたがその成敗が憎い。襲いかかる浪人武士には大店から大金を巻き上げ分け与えた。
「終わりの雪」
盗賊を殺した罪で島流しになっていた男朝吉が免罪となり宗因たちは身寄りが無い真面目な朝吉を助ける。やがて仕事も順調に進むとあの時盗賊から救った娘お咲に会い、夫婦となるように進める。
「幼児の橋」
幼い少女が橋の袂で泣いていた。捨て子だと悟った宗因の仲間が助けると、父親は博打にハマり大きな借金を抱え、大元はその美人の妻を囲った。宗因は家族を探しに賭博場に出かけことを済ます。
「因果応報」
川が氾濫し子供が流されると朝吉は必死に子供を空くべく川に飛び込み救う。それは昔殺害した男の一人息子でその女房に御礼される。
「左七町番屋日録」
夜廻役を引き受けた左七が扇絵師の弟子から嫌がらせを受けた。その後酒に酔い仕事を遅らせる悪い方へ回るようになると左七が酒を止めるお呪いをかける。
「偸盗の夜」
扇絵師の買付大店での祝言があり、お琴などお手伝いをすることになった。そこに盗人一味が侵入した時お琴が見たものは盗賊の仲間の母親だった。
ー粋な言葉
「京は巧みに人を誑かし、優雅に生きる町なのじゃ」
「人間お互いまさ、助け合って生きて行かなあかんのどすわ」
「人にとっては所詮この世は仮の宿。神代の昔から長い人の営みを考えれば、わしらの一生など短いもの。どんな苦しみや悲しみも、この世で解決のつかぬ事はない。私はさまざまなことをしてきたつもりだが、まだ、一度も死んだことがない。死とはどのようなものか、それを自分で確かめられるものを楽しみにしているわい」