@この小説のテーマは、真実を追求する正義感を持った個人と、名誉と権力によって真実が歪められる組織との対立を描いている。内容は退職警官が冤罪事件の真相解明に執着、「罪を犯した者は罰せられるべき」という正義感を持っていること、しかし組織が、「冤罪」ということに対して名誉と地位を守るために過ちや罪を隠すのが当たり前になっている。 現実、官庁、特に政治権力を用いた真実の隠滅、消滅、改竄、破棄など自分達の過ち、罪を隠そうとする行為は近年頻繁にあるように感じる。「正義を正す」善人や組織が減少し、金と権力で歪められた社会があることを認識しておくべきだ。
『慈雨』柚月裕子
「概要」警察官を定年退職した神場智則は、妻の香代子とお遍路の旅に出た。42年の警察官人生を振り返る旅の途中で、神場は幼女殺害事件の発生を知り、動揺する。16年前、自らも捜査に加わり、犯人逮捕に至った事件と酷似していたのだ。神場の心に深い傷と悔恨を残した、あの事件に――。かつての部下を通して捜査に関わり始めた神場は、消せない過去と向き合い始める。組織への忠誠、正義への信念……様々な思いの狭間で葛藤する元警察官が真実を追う
ー16年前に6歳の幼児が殺害され犯人が逮捕された。その後犯人は無実だと訴えたがDNAの証拠で有罪となり、服役した。その後刑事神場は退年退職し、警察、裁判所の冤罪では無いかと何かにつけ悪夢を見た。それは幼児が「おうちに帰りたい」という夢を見た。
ー神場が四国八十八番札巡礼中にまたしても同じような幼児殺害事件が発生したが、手掛かりとなるものは見つからず捜査は難航していた。神場はもしかしたらこの事件は同一犯か、同じケースだと悟り元部下に共通点を探させた。そして2つの事件から内密に16年前の事件を捜査し出した。
「人間がやることに完璧という言葉は存在しない。どこかに微細とはいえ瑕ある。だからこそ、我々捜査員は、疑念を限りなくゼロに近づけなければならない」
「刑事のお前が私情を向けるべき場所は、警察組織や課長、ましてや俺じゃない。第3の純子ちゃんを決して生み出してはいけないという、1点だけだ。」
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