その彼を見たのは、夕暮れに近い,晩夏と早秋の狭間だった。
赤とんぼが舞うなかに1人川面を見ながら立っていた。
おもむろに右手をまっすぐに上げ,人差し指を伸ばした。
直ぐに飛びつかれ地一匹のトンボが指先に止まる。
彼はゆっくりと,ゆっくりと腕をおろし,トンボを目の前で眺めると,
ふっ と息を吹きかけてトンボを飛ばした。
後に、付き合うようになってからその事を尋ねてみた。
そのときは、時間や歴史は川のように,少しずつ移動しながら絶えず流れている。
人体の細胞も,食事のごとに少しずつ細胞が入れ替わり、肉体的には完全に別の物になる。
川・歴史そのものは,記憶すらしていない。が、土地や人が記憶していく。
人も,本人がではなく,他人が記憶してくれる事で,存在した事が証明される。
そう,父に言われたのだけど,何の事かわからなかったから川を眺めていれば、分るかもしれない。
と,あそこに居たそうだ。
彼の父は、考古学者なのか歴史学者ハッキリは教えてもらえなかった。
どっちも兼ねていたのかもしれないし,単なる歴史好きや考古学好きなだけかも知れなかった。
彼の言う事には,彼の父親がカッコを付けていった言葉が
「歴史・情報と言ってもいい。積み重なるのは、古いものの上に新しいものが、降り、重なるのではない。
古いものの下から,古いもの全てを,持ち上げながら立ち上がってくるのだ。
だから,新しい事をしようとすると,古いものが邪魔になるのだ」
「他の文明・情報とぶつからない限り,古いものから斜めに新しいのは伸びていくのが、流行というものだ」
「古い物が無くなるのではない。新しいものは違う方向に枝を伸ばしているにすぎない」
「十分な時間があれば,枝は幹にだってなれるんだけどな」
小学生の子供に、キャッチボールしながら言うんだぜ。分るわけないって言うの」
そんな彼は,私の旦那で歴史学者だ。
赤とんぼが舞うなかに1人川面を見ながら立っていた。
おもむろに右手をまっすぐに上げ,人差し指を伸ばした。
直ぐに飛びつかれ地一匹のトンボが指先に止まる。
彼はゆっくりと,ゆっくりと腕をおろし,トンボを目の前で眺めると,
ふっ と息を吹きかけてトンボを飛ばした。
後に、付き合うようになってからその事を尋ねてみた。
そのときは、時間や歴史は川のように,少しずつ移動しながら絶えず流れている。
人体の細胞も,食事のごとに少しずつ細胞が入れ替わり、肉体的には完全に別の物になる。
川・歴史そのものは,記憶すらしていない。が、土地や人が記憶していく。
人も,本人がではなく,他人が記憶してくれる事で,存在した事が証明される。
そう,父に言われたのだけど,何の事かわからなかったから川を眺めていれば、分るかもしれない。
と,あそこに居たそうだ。
彼の父は、考古学者なのか歴史学者ハッキリは教えてもらえなかった。
どっちも兼ねていたのかもしれないし,単なる歴史好きや考古学好きなだけかも知れなかった。
彼の言う事には,彼の父親がカッコを付けていった言葉が
「歴史・情報と言ってもいい。積み重なるのは、古いものの上に新しいものが、降り、重なるのではない。
古いものの下から,古いもの全てを,持ち上げながら立ち上がってくるのだ。
だから,新しい事をしようとすると,古いものが邪魔になるのだ」
「他の文明・情報とぶつからない限り,古いものから斜めに新しいのは伸びていくのが、流行というものだ」
「古い物が無くなるのではない。新しいものは違う方向に枝を伸ばしているにすぎない」
「十分な時間があれば,枝は幹にだってなれるんだけどな」
小学生の子供に、キャッチボールしながら言うんだぜ。分るわけないって言うの」
そんな彼は,私の旦那で歴史学者だ。