フランス語読解教室 II

 多様なフランス語の文章を通して、フランス語を読む楽しさを味わってみて下さい。

サルコジの新年 (1)

2009年01月14日 | Weblog
 [注釈]
 * De la sueur et des larmes : ここは、Pas de dc'claration particulie`re. に続く文章ですから、サルコジの演説の凡庸な内容の説明でしょう。新しい年に向けての 大統領の voeux のお決まりの演説内容として、まず、災いに遭った人々、虐げられている人々に対する慰撫の言葉を述べ、つぎにフランスの兵士たちへの労いの言葉が続きます。そのことを表現していると考えられます。それにしても、「苦労をねぎらい、諸々の悲しみを慰め」という Moze さんの訳は見事ですね。
 * elle fait passer au second plan : 絵画、写真などでは le premier plan が「前景」、le second plan は「後景」となります。
 * Fort de sa pre'sidence de l'Union europe'enne : 前段にあるように、特に内政についての約束を先送りする un sursis を、サルコジはうまい具合に手にしたという文章に続いていますから、ここは彼が08 年、年内まで勤めたEUの議長であったことをいいことに…、ということでしよう。
 * il pare au plus urgent, : urgent 「緊急の」という形容詞が最上級になっていて、さらにそれが名詞化しています。le plus urgent 「緊急の課題」

 [試訳]
 ニコラ・サルコジはフランス国民に向かって「2009年に私たちを待ち受けている困難は大きなものとなるでしょう」と語った。特別な演説ではなかった。私たちの汗と涙に言及し、この危機から生まれ出ようとしている「新たな世界」に備える努力を呼びかけた。この危機が大統領にとって有利に働いたことがひとつある。それは、この危機によって、内需拡大、完全雇用の促進、そして減税といった数々の困難な約束が背景に退いてしまうからだ。大統領が、680億ユーロ、GDP の 4%分を国民に還元すると言ったことを覚えている国民がいるだろうか。日ごとに失業が広がる中、賃上げを訴えることが出来る人がいるだろうか。
 だからはニコラ・サルコジは猶予を手に入れたと言える。EU議長であることを後ろ盾に、大統領はプラグマチィスムを行動指針として、最重要課題に備えている。危機は未曾有のものだ。経済振興によって成長を下支えするのは当然だとしても、金利低下だけでは不十分である、と。経済振興は260億ユーロの規模となった。政府は需要よりも供給によって、消費よりも投資によって経済を後押しした。
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 以前質問を受けていた女性名詞として扱われている happy few の件ですが、ぼくの怪しげなフランス語の論文の添削を今お願いしている友人に尋ねてみました。そうすると、以下ような答えが返って来ました。<< Je pense que Le Clézio l'a utilise'e,cette expression au sens de "tribu" >> tribu という言葉はもちろん女性名詞です。なるほどと、ぼくは納得しましたが、気をつけないといけないのは、いわゆるネイティブの方の言語解釈が絶対的に正しいということはないということです。その友人は、文学に大変造詣の深い、元教師なのですが、それでも、貴重な意見のひとつとして捉えておくのがいいと思います。
 それでは、次回は、この論説記事を最後まで読みましょう。