フランス語読解教室 II

 多様なフランス語の文章を通して、フランス語を読む楽しさを味わってみて下さい。

フランスの特殊ケース 人口統計学の面から (1)

2009年11月11日 | Weblog
 [注釈]
 
 * la France revient de loin : 「フランスが遠くから戻って来た」、この具体的な内容が : 以下で説明されています。つまり、少子化にかつて悩まされていた過去から、今の fe'condite' の時代にたどり着いたこと表しています。Moze さんの「起死回生」という的確な訳語を拝借したことを、ここでお断りしておきます。
 * le retard a' la vien en couple et a' la fe'condite' : 汎ヨーロッパ的に広まっているのは、日本的にいうと「晩婚」と「高年齢出産」です。この二つの「遅れ」を、フランス人女性は三十歳以降二人以上の子供を産むことによって取りかえしている、ということです。

 [試訳]
 
 フランスの多産
 本当にフランスは特殊ケースです。2008年フランスは、女性一人についての出生率が 2 を越えて、ヨーロッパ第一位となりました。フランス一国で、ヨーロッパ大陸全体の人口の自然増加数の3/4をまかなっています。この現象はフランスが起死回生を果たしただけに興味深いものです。1930年代末、フランスは世界で最も高齢化が進んだ国でした。私の祖母の世代、つまり1900年より少し前に生まれた人々は、世代交代を用意するだけの子供を産んではいませんでした。ですから、人口の更新は20世紀初頭より今日の方が順調なのです。
 
 多産を支える数々の理由
 他のヨーロッパ諸国と同様フランスも、出生についてのカレンダーはずれてしまっています。つまり、女性たちはますます遅くに子供を産むようになっていて、第一子を生むのは全体として 三十少し手前となっています。けれども、ドイツ、イタリア、スペイン、中央ヨーロッパの女性たちがそこで止まるのに対して、フランスの女性たちは、三十歳以後に第二子目を生んでいます。こうしてゆっくりと母親になることによって、フランス人女性は、今日全ヨーロッパ的に進んでいる晩婚化と妊娠の高齢化という遅れを取りかえしているいることになります。
 フランスの多産の第二番目の特徴は、その大多数が結婚以外の場で見られることです。2008年、約52%の子供が結婚していないカップルから生まれています。30年の間に、つまりフランスは、結婚以外の場での出生率が非常に低い、南ヨーロッパのラテンモデルから遠ざかり、北欧モデルに近づいたことになります。つまり、女性も仕事を持ち、比較的高齢で出産し、しかも結婚に縛られず多くの子供を生むというモデルです。
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 みなさんの訳文を拝見して、やはり今回のテキストは少し易しすぎたかと反省する一方で、フランス語の読みのみなさんの確かさをあらためて確認できて、とても心強く感じています。ぼくは運転免許さえ持たない前近代の人間なので、こうした比喩を用いるのも相応しくないのですが、みんさんもう立派に安心して、一般道でハンドルを握れるレベルですね。
 shoko さんが参加なさっている「近代ヨーロッパ外交史に学ぶ」という講座、とても興味深そうですね。ぼくも区民なら、是非参加したいところです。ただ、そこでも受講生は比較的年配の方が大半を占めるようですね。
 今の若い人たちにとって、かつての「教養なるもの」が、安定した生活を保障されたものだけが享受できる贅沢品になってしまっているのではないかと、とても心配です。
 昨今は、「共通教育科目」というのですが、かつてのいわゆるパンキョウとしてフランス語を熱心に学び、それをきっかけに広くヨーロッパ文化に興味を覚える学生は、少数派としても一定数は毎年います。それでも 3 年生の後期ともなると、周りが一斉に「就活」に動き出すものですから、よほど本人が超然としているか、世間の動向にいい意味で鈍感でないと、自身の関心の向くままに自由に学ぶことは、今の大学ではなかなか難しいようです。
 こうした体制にあって、フランス語教師など本当に非力なものです。
 
 それでは、次回は les fondements de cette politique."までとしましょう。
 Smarcel