JR九州のICカード乗車券「SUGOCA」に来年2月、ポイントサービスが始まることになった。JR系のICカードでは初めてのサービスと胸を張るが、その背景には在福鉄道会社3社間の激しい「カード戦争」が目前に迫っていることも予感させる。利用者はどう選択していくのか?
経済誌チック風に、2010年春を占ってみました。
SUGOCAポイントの概要
まずは
リリースされた、ポイントサービスの概要から紹介しよう。ポイント付与率は1%で、1回乗車毎に付与される。200円区間を乗車した場合は2ポイントといった具合だ。ただし十円単位の端数は切り捨てられるため、例えば190円区間では1ポイントと、実質1%を切ることになる。またカードを利用して券売機で切符と引き換えた場合には、ポイント付与はない。
なお導入からしばらくの間は、キャンペーンとしてポイントが3%となることも、合わせてリリースされている。
これまで他のJRでもポイントサービスが実施されてきたが、東日本のSuicaではショッピングポイントに限られ、西日本のICOCAではクレジットカードと連携した「SMART ICOCA」限定のサービスとなっている。無記名カードを含むすべてのカードで鉄道乗車時にポイントが付与されるカードは、JR系ICカードでは初めてのことである。
またJR九州がこれまで発行してきた磁気カード「Waiwaiカード」でも、プレミアの付与(例えば5,000円カードで5,500円使える等)はなかったため、JR九州のカード自体としても初の試みといえるだろう。西鉄「nimoca」や地下鉄「はやかけん」のポイント付与率(1~3%)に比べれば寂しいものの、これまでなかったサービスの誕生は、利用者として喜ばしい。
共通化後を見越した「囲い込み」ツール
JR九州を、過去にないサービスに駆り立てたものは何だったのか?
現在、在福3社のICカードは相互利用できない。利用者にとっては不便極まりない状況ではあるが、それぞれが共存している状態ともいえる。利用者は、頻繁に利用する鉄道会社のカードをそれぞれ持つという、単純な図式に収まっている。
しかし来春(現在のところ、具体的な時期は発表されていない)には、3社に加え東京のSuicaとの相互利用が始まる。利用者はいずれか1枚のカードを持てば、シームレスに在福鉄道3社を利用できるようになり、利用者にとっては「どのカードでもいい」という状態になる。
ところが鉄道会社側にとっては、そうはいかない。自社線で他社のカードを使用された場合、相応の手数料を相手側の会社に支払わなければならない。相互利用で利便性を向上させカード利用者を増やすことも大切だが、なるべく自社線では自社カードを使ってもらいたいのだ。そこで、自社の鉄道利用者を囲い込むツールとしてのポイントサービスとなる。
nimoca、はやかけんでは、既に導入時からポイントサービスがスタートしている。そして相互利用開始後も、相手利用先での乗車ではポイントが付かない。ポイントサービスがないままSUGOCAが共通利用を開始した場合、JRのメインユーザーであっても、
「どうせポイントが付かないのなら、たまにバスに乗った時ポイントが付くよう、nimoca1枚だけ持っておこう」
という選択が成り立ってしまう。JRのユーザーには、共通化後もSUGOCAを持ってもらいたい、そんな願いが込められているものと推測できる。
利用者は何を選べばいい?
では3社のカードが競うことになった福岡で、利用者はどのカードを持てばいいのか?
3社とも頻繁に利用するのであれば、これまで通り3社のカードを持つのが、ズバリお得だ。それぞれの会社で、それぞれのポイントを積み立て還元していくことこそ、もっともお得に利用する方法である。
でもデポジット(保証金)をそれぞれ払うことになるし、ICカードを財布に何枚も入れると干渉して反応しない。電車、バスなんてたまにしか乗らないし、なにより面倒…という向きは、共通化の恩恵を受け1枚のカードで乗りこなすのが良いだろう。
ポイント還元を多く受けるためにも、良く利用する会社のカードを選択するのが賢い選択だが、各社のポイント付与率の違いには留意したい。例えばはやかけんのポイント還元率はSUGOCAの倍の2%なので、1ヶ月にJRで5,000円、地下鉄で3,000円使うような人ならば、はかやけんを選択した方がお得だ。
また電子マネーとして利用した際も、相互利用先の加盟店ではポイントが付かないので、これもよく考慮したい。JRユーザーであっても、天神の西鉄系商業施設の買い物で電子マネーを多用するのであれば、nimocaも選択肢に上がってくる。
何やら複雑なことになってしまった福岡のICカードだが、競争がサービス向上に結びつけば、利用者のメリットも大きい。利用者としても、ライフスタイルに合わせて賢く選択していきたいものである。