ソウル週末旅行の3日目は、5月から走り始めた京議線の観光列車、DMZトレインに乗ることにしました。
DMZとは「非武装地帯」のことで、韓国と北朝鮮の休戦ライン付近を示す言葉です。北と接する板門店の観光は外国人に限られますが、非武装地帯観光は、当事者たる韓国の人が最も北に近付ける手段でもあります。
その「安保観光」の始発駅・都羅山までのアクセスは従来、京議線の電車と列車が担ってきましたが、専用の観光列車としてDMZトレインがデビューしました。
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DMZトレインは、友人宅の近所の水色駅には止まらないため、一旦ソウル駅へ戻らねばなりません。しかしソウル駅に入る京議線の電車は1時間に1本しかないため、一旦DMC駅までバスで出て、空港鉄道でソウル駅に抜けました。
上岩洞付近は、短中距離の路線バスが頻繁に行き交うエリア。中央バスレーンが設けられ、車に邪魔されずバスはかなりのスピードで走ります。DMCからの空港鉄道も駅か少なく早いのですが、駅が地下深く、電車に乗るまでの時間と手間ははかなりかかりました。
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ネットで予約していた切符を受け取り、ホームへ。ソウル発の京議線「電車」は、本体の駅から離れた専用ホームから発着しますが、「列車」のDMZトレインは長距離列車のホームに入ります。
DMZトレインの車両は、元は普通列車に相当する「通勤列車」だったディーゼルカーを改造したものです。2、3号車は手を取り合う人々がラッピングされ、平和な世界を表現しています。
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反対側の1号車は、ダイナミックにSLの姿をラッピング。なかなかかっこいいです。
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車内も観光列車仕様にリニューアルされていますが、座席は通勤列車時代の転換クロスシートのままです。
乗車の際は特急クラスのセマウル号運賃に、特室(グリーン車)料金相当が加算されます。割高にも感じられますが、客室乗務員は4人も乗っており、各種サービスのための代価と捉えるべきでしょう。先輩格の観光列車と同じ考え方です。
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ロングシート部も、テーブルを設ければソファ席のよう。
ただ切符が売り切れとなっていたこの日も、ロングシートの席の主は現れずじまい。一般には発売されない席なのかもしれません。
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車端部には、窓を向いた席も。窓も大きく取られており、ここが一番の「アタリ」かも。
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ソウル駅を発車するとほどなく、客室乗務員が非武装地帯への入場申請書を配りに回ります。外国人の乗客には英語で対応しており、安心して参加できます。
なお都羅山周辺の徒歩散策は無料。統一展望台や南攻トンネルを巡るバスツアーは別料金で、申請書に記入すれば申し込めます。
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2号車にはカフェカウンターがあり、足元まで広がる車窓を眺めながらのコーヒータイムを楽しめます。
飲料やおつまみの他、戦闘食やオープナーなどの記念品も各種取り揃え。僕も3,000ウォン(300円)のオリジナルロゴ入り登山カップを手に入れました。
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カウンターの一角には、こんなブースも。乗務員の一人がパーソナリティーを務める「車内ラジオ」の発信ブースで、用紙に書き込んで投函すれば、リクエストにも応えてもらえます。
西海岸を走る観光列車「海列車」にも同様のものがあり、リクエストすれば旅の思い出になること請け合いです。
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ぐるりと回り、水色駅に戻ってきました。横に長い、MBC文化放送の新社屋がよぎります。
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列車はソウルを離れ、通勤電車とすれ違いながら北上を続けます。
線路をまたぐコンクリートの構造物は、北が南攻を仕掛けてきた際には線路をふさぐためのもの。軍の監視小屋も目に付き、軍事境界線が近づきつつあることを実感させられます。
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ソウルの北側は元来、戦争のリスクから開発が遅れてきたが、近年ではそうも言っていられず住宅開発が進むエリア…と語られます。
しかし農村へと変わるタイミングは、やはり今も南側よりもいくぶん早めです。青々とした田んぼが広がってきました。
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汶山駅で下車。非武装地帯を目指すDMZトレインですが、今回の乗車はここまで!都羅山からの安保観光に参加したいのはやまやまだったのですが、帰りの飛行機の時間の都合上、ここで折り返すほかなかったのです。
まる1日あった昨日乗ればよかったのに…と思われるかもしれませんが、運悪く定期検査のため運休日でした。どうしてもDMZトレインに乗ってみたかったので、汶山折り返しで乗ってみたという、苦肉の策です。
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汶山駅で降りる人なんて普通はいないのでしょう。DMZトレイン専用の列車ホームはまさに閉鎖されるところで、ギリギリのタイミングで脱出できました。
なお都羅山からの安保観光には12年前に乗っており、今もそんなに変わってはいないはず。その際の様子は、
当時の日記の10月26日の項をご参照ください。
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とはいえせっかく汶山まで来たので、北を臨む街らしい「統一公園」を訪ねてみました。駅からは徒歩10分ほどの道のりです。
公園には、朝鮮戦争で命を落とした人々の霊を慰める塔がいくつも建立されています。
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軍人だけではなく、外国人を含む従軍記者の犠牲者たちの慰霊碑も。
作戦中に命を落とした人をまつる近年のものも多く、朝鮮戦争は決して終わっていないことを実感できる場でもあります。
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帰路は、京議線の通勤電車でソウル市内へ戻ります。ロングシートでうつらうつらすること、1時間強の道のりです。
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地下の弘大入口駅で下車。若者に人気の街で、短い休日を楽しむ人が一斉に降りて、ホームは人で埋まりました。
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弘大の街。並木道が爽やかです。
路上パフォーマーが現れる夜も楽しいのですが、昼の雰囲気もなかなかですね。
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おしゃれな洋食屋さんで、早めのランチ。若者の街らしい雰囲気を感じられました。
飛行機の出発3時間前なのにゆっくりできるのも、弘大と空港を直結する空港鉄道があればこそ。旅行の最終日の時間も、有効利用できます。
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12時過ぎ、名残惜しくも友人と別れ、空港鉄道で帰路へ。
途中の黔岩駅止まりの電車だったので、一旦下車。6月末から高速鉄道KTXが乗り入れを始めた空港鉄道ですが、黔岩駅は唯一の中間停車駅でもあります。外側に低床ホームを増設して、長い16両編成に対応していました。
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後続列車に乗り継ぎ、仁川空港着。こちらも小さなKTXの切符売り場と、新しい改札口がお目見え。大田へ釜山へ光州へ、空港から1本で行けるようになり便利になりました。
ただ現在のところ、乗り入れてくるKTXはわずか9往復に過ぎず、時間を選ぶのは残念なところ。増便が期待されます。
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出航1時間半前、13時20分にT-wayのカウンターに到着。前回と同様カウンターはガラガラで、5分で手続きが完了しました。利用者の立場からすれば、ありがたいことです。
出国検査場は混雑しており、20分ほどの時間を要しました。
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前回と同じように、背後をLCCの済州航空機が通過していきます。
手続き場こそガラガラでしたが、機内はほぼ満席の盛況。日本人の比率が多く、ほっとしました。
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乗る度に機内のエクステリアが異なる印象のあるT-way。今回の帰路はレザー張りのシートで、枕カバーも設けられていませんでした。
手元にはオーディオのスイッチもありましたが、電源は入っていません。まあ1時間5分のフライトだし、離着陸時の電子機器利用も解禁になったので、手持ちのオーディオを使えば問題ないわけですが。
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例によって対馬上空で揺れたものの、その他はいたって順調なフライト。日本側は豪雨になっていましたが、大きな揺れもなく着陸しました。
ざあざあ振りではありましたが、ターミナル近くに車を停められていたのでほとんど濡れずに済んだのもラッキー。我が身の幸運に感謝しつつ、短い旅も幕を閉じました。