本当の日本のリーダーとは:十七条憲法第三条

2007年01月24日 | 歴史教育

 「十七条憲法」の第三条は、戦前もっとも誤読・誤用されたところです。

 しかし、第一条から続いている文章の流れ〈コンテクスト)で、しかもこの条文全体を素直に読んでみてください。


 三に曰く、詔(みことのり)を承(うけたまわ)りてはかならず謹(つつし)め。君(くん)をば天とす。臣(しん)をば地とす。天は覆(おお)い、地は載(の)す。四時(しいじ)順(したが)い行ないて、万気(ばんき)通うことを得。地、天を覆わんとするときは、壊るることを致さん。ここをもって、君言(のたま)うときは臣承る。上行なうときは下靡(なび)く。故に詔を承りてはかならず慎(つつし)め。謹(つつし)まずば、おのずから敗れん。

 第三条 詔を受けたならば、かならず謹んで受けよ。君は天のようであり、臣民は地のようである。天は〔民を〕覆い、地は〔民を〕載せるものである。四季が順調に移り行くことによって、万物の生気が通じることができる。地が天を覆うようなことをする時は、破壊に到るのである。こういうわけで、君が命じたなら臣民は承る。上が行なう時には下はそれに従うのである。それゆえ、詔を受けたならばかならず謹んで受けよ。謹んで受けなければ、おのずから事は失敗するだろう。


 戦前、この条は要するに「天皇陛下の命令には絶対服従せよ」という意味に読まれ、それが聖徳太子の教えだと説かれました。しかし、そうでしょうか。

 確かに最初に「詔を受けたならば、かならず謹んで受けよ」と言われてはいます。

 しかし、そこだけを読まず、前と後を続けて読んでいくと、「何であれ詔ならばいつも無条件・無批判に盲従せよ」ということではないようです。

 それは特に、この後にちゃんと、「なぜ、どういう詔を謹んで受けなければならないのか」説明されているからです。

 「君すなわち天皇すなわちトップ・リーダーの役割は天の命を受けて天の代理として民およびすべての生きとし生けるものを覆う・庇護することにあり、臣すなわち高級官僚すなわちサブ・リーダーの役割は大地のように民およびすべての生きとし生けるものを載せる・支援する・支えることにある」と言われています。

 トップ・リーダーとサブ・リーダーが協力しあって本質的なリーダーとしての役割を果たすならば、四季は順調に巡り――つまり異常気象になったりすることなく――万物のいのちの気が活き活きと通うことができる、というのです。

 ここで太子が言いたいのは、トップ・リーダーがその役目を果たすかぎりにおいて(つまり条件付きで)、サブ・リーダーはその命令を天の命令のように謹んで受けなければならない、ということではないでしょうか。

 太子は、いうまでもなく儒教の「天命」「天子」という思想を踏まえて語っています。

 そしてここでは言及していませんが、もちろん、天子が天命にそむいた場合は、天命が変革される、つまり「革命」がありうるのだという考えも知っていたはずです。

 それを知った上で、自らを「日出る処の天子」と名乗ったにちがいありません。

 天子は、天に代わって人と人の間に平和と幸福を、人間と自然の間に調和と安定をもたらすことが役割なのです。

 太子の視野には、人間だけでなく、自然と人間の関係も入っていることが、第三条からはっきりと読み取れる、と私は思います(これは従来あまりちゃんと読み取られていなかったのではないでしょうか)。

 そうした天命である「和」を実現するためのリーダーとしての君・天皇には、臣・官僚たちは真心から従うように、というのがこの個所で語られていることです。

 ところが、サブ・リーダーが、自らの私利私欲のために権力を獲得したくてトップ・リーダーの座を狙うのは、地が天を覆おうとするようなもので、天地自然の理に反しており、それでは集団が大混乱し破壊に到ってしまうではないか、と(ここには、蘇我馬子への痛烈な警告が隠されていると思われます)。

 今、天皇(およびその代理・摂政として太子)が天命を受けて真心から「和の国日本」を創造しようとして詔(特に第一条)を発している以上、それには誠心誠意従ってほしい、という命令・呼びかけです。

 そうしないと、すべての人、すべての生き物を幸せにしようという、この大きな国家プロジェクトは失敗してしまうだろう(そうなってしまえば、結局、誰も幸福にはなれないのだ)、というのです。


 これは、現代にもそのまま通用するリーダーの本質論ではないかと思います。

 努力した(その結果勝った強い)人(だけ)が経済的に報われるような経済成長だけを目指すリーダーは、聖徳太子の国のリーダーとしてはまったく失格だ、とあえて言わざるをえません。

 今、日本では、例えば国民健康保険料が払えなくて(払わなくて、ではありません)、病気になっても医者にかかれない人が急増しています。

 8年連続で、今年も自殺者が3万人を超したそうです。

 ここで私が挙げるまでもなく、こうした問題は山積しています。

 現状を見れば日本は、「緑の福祉国家」どころか急激に「福祉国家」からもはるかに遠ざかりつつあります。

 日本をこんな国のままにしておいていいのでしょうか。

 日本の原点・「十七条憲法」の心をしっかり自分の志にした、本当の「日本のリーダー」の登場が待ち望まれます。



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