唯識心理学の教育的・セラピー的効果

2011年02月08日 | いのちの大切さ

 先日、伝統のある大手の出版社から大きな心理学辞典の「唯識心理学」という項目の執筆依頼が届きました。

 すでに他にも「唯識」の項目が入った小さめの心理学辞典はあり、項目執筆をしたことがあるのですが、さすがに「唯識心理学」は初めてです。

 心理学の専門家が監修する大型辞典に載るということは、「唯識は大乗仏教の深層心理学だ」という私の主張がアカデミックな世界にも認められるようになってきたということだと思われ、「やっとそういう時代になったんだなあ」という感慨がありました。

 コスモロジーと唯識を組み合わせた講義が教育的・セラピー的効果をもたらすことは、繰り返し報告してきたとおりです。

 例えば、教えている3つの大学のうち最後になったM大学の「仏教心理論」のクラスも今週の補講で終わりますが、先週すでにレポートを提出した2年生の女子学生が次のような感想を書いてくれました。


 前期、後期を通して授業を受けて、仏教に対する暗い・古いというイメージが変わったのはもちろん、なにより自分の中の心の変化が大きかった。今までの私は周りとのつながり、ましてや宇宙とのつながりなんて考えたことはなかった。しかし、授業で「私は私でないものによって私であることができる」という先生の言葉を聞いて、つながっていることのすごさ、大切さ、ありがたさを感じるようになった。このことにより、前は嫌いだった雨も少しは好きになれたし、周りの人の成功やよろこびにすこし嫉妬を感じたりしてけど、今は一緒に素直によろこべるようになってきた。また、前はなかなか家族に言えなかった心からの「ありがとう」を伝えられるようになった。周りからしたら当たり前で、ちょっとしたことかもしれないけど、私にとっては大きな変化、成長である。正直、はじめは単位のために受けていたこの授業も、気づけば興味を持つようになっていたし、1回1回の授業が私にとってのプラスとなっていた。この授業を受けれたことをムダにしないために、普段の生活の中に七施を取り入れてみたり、ふと、周りとのつながりを心から感じられる時間を持つことができればいいと思う。普段は授業後に教科書を開くことのない私。でもきっとこの教科書は読み返す日が来ると思う。良いことを多く書いたので、逆にウソのように感じられてしまうかもしれないが、私はこの授業を受けられたことが生活のプラスになり、すごくうれしく、先生の授業に巡り会えたつながりに感謝している。1回も欠席していない私にとって、10日の最後の授業に用事で出席できないことだけがすごく残念ですが、毎回の先生のお説教っぽい所がうれしかった。これからも体に気をつけて、このすばらしい授業を続けてほしいです。1年間ありがとうございました。


 読みながら、「良いことを多く書いたので、逆にウソのように感じられてしまうかもしれないが」という言葉に、思わずにやにやしてしまいました。

 確かにちっとも授業に出席していないし、あまり内容を理解していると思えない学生がいいことばかり書くと、お世辞・ウソと思わざるをえませんし、そういうのもある程度はあるのですが、上記の学生の場合はAプラス評価のレポートの最後に書いてくれたものですから、信用していいでしょう。

 もう一つうれしかったのは、「毎回の先生のお説教っぽいのがうれしかった」という言葉です。

 もちろん反発する学生もいますが、全体として若者たちは上の世代に「どう生きるべきか」、根拠のあることを自信を持って語ってくれることを期待していると思います。

 私は、告知と合意(インフォームド・コンセント)の手続きとして、年度・学期の最初の授業で、「この授業を受けたら、一年または半年ずっと親父の説教を聞かされることになります。説教のいやな人は受講しないように」と言うことにしていますが、それでも受ける学生は全体としてずっと増え続けているのを見ると(今年はそうとうきついことを言って少し減らすことができましたが)、そうとう多くの若者が求めていると考えてまちがいないでしょう。

 もうまもなく64歳、来年は高齢者、20歳前後の彼ら、彼女らにとって、お祖父ちゃんでもいいくらいの歳にいつの間にかなってしまいました。

 しかし、「これからも体に気をつけて、このすばらしい授業を続けてほしいです」という孫のような言葉に励まされて、来年度もしっかり「親父の説教」、いやそろそろ「お祖父ちゃんのお説教」を続けようと思っています。



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