イギリス/ストックポート日報 《England/ Daily Stockport》

イギリス北西部の歴史ある街、ストックポート Stockportから(ほぼ)日替わりでお送りする、イギリス生活のあれこれ。

制作意図とイベントの趣旨にちょっぴり疑問あり!ストックポートのパブリック・アート・イベントで町おこしなるか?

2019年07月05日 09時00分00秒 | ストックポートとその周辺


アート表現を施した巨大フィギュアを町中に点在させる おなじみのパブリック・アート・イベントがストックポートでも6月29日から開催されています。

作品番号6;Robert。


背景は、1930年代の映画館の内外の建築詳細が忠実に修復、再現された劇場/イベント・ホール、プラザ Plaza

作品番号7;Ferdinand


遠景の高い煙突のある建物は、ユニークな帽子博物館、ハット・ワークス Hat Works です。

で、ロバートって誰?フェルディナンドって?
いえ、そもそも、なぜカエル!?

ストックポーツ・ジャイアント・リープ STOCKPORT'S GIANT LEAP という「アート・トレイル」イベントです。

ストックポートの大いなる躍進(leap)と、ぴょーんと跳ねる(leap)カエルにかけた こじつけシャレなのはわかるのですが「ストックポートといえばカエル!」の説得力ある根拠がまるでありません。

ところで、私はカエルが大好きなのですが!

手もとに、ガイドマップ付きの解説チラシがあります。


しっかりした紙に印刷され、観光地図としても使えます。
もちろん、このアート・イベントそのものが観光/商業促進が目的なのは明らかです。

カエルめぐり(trail)に全部で16のカエル・アートを探して歩くとストックポートタウンセンターのめぼしい観光スポットをひと巡りできます。
トレイルのルートにはもちろんショッピングエリアや飲食店エリアも含まれているので、カエルめぐりで人を呼び寄せる商業効果は抜群です。

要するに、「町おこし」プロジェクトですね。

それだけでなく....
「ロバートってだから誰よ!?」「ロバートの1980年代のメンズ・シャツの柄みたいなこの装飾意図はなに?」と突き止めたくて解説チラシを読んでも、スポンサー企業(例;ロバートのスポンサーは保険会社)の業務内容に絡めた言葉遊びみたいな解説しか書かれていなくて「これ、ほんとにアートイベントか!?」と追及したくなります。

フェルディナンドは中世のおとぎ話の登場人物みたいな名前です。


表面の黒白装飾は ストックポートの名物史跡ブラモル・ホール Bramal Hall(うちのそばです!)を思わせます。
16世紀のチューダー建築の特徴のハーフチンバー模様なのですがやっぱり解説にはその記述がありません。

作品番号9;Mrs Mersey the Hoppy Shopper


真正面に、卵!(好きですが)

ハイストリート・ショップ(大手チェーン店)が並ぶ、ショッピング・アーケード、マージ―・ウェイ Mersey Way の中にあります。

「ホッピー・ショッパー」も苦しいですね。
hop も leap と同じで「ぴょんぴょん跳ねる」意味なのですが、happy shopper(満足してる買い物客)にかけるシャレなのです。「ハッピー・ショッパー」はお買い得を表現する決まり文句。



もちろんスポンサーはマージーウェイ・ショッピングセンター!



マージーウェイ・ショッピングセンターの下にはストックポートに水源があり、大河となってリバプール湾に流れ込むマージー河 River Merseyが流れています。

解説によるとこの作品には、1960年代のヒット曲の歌詞にまつわるものが描きこまれているとか。

え、どこに!?
どう見ても「カエルの一生」絵画にしか見えませんが。
今度行って、よく見てきます。(1960年代のイギリスのヒット曲のことはよく知らないのですが。印刷ミスじゃないの?)

やはり解説には「Mrs マージーはマージーウェイをぴょんぴょん(ホッピング)ショッピングしまわるのが何よりも好き!」と、愚にもつかないスポンサーによいしょコピーがかかれています。

なぜ1960年代?という答えは、何となくわかるような気がします。次の作品と関連がありそうです。

作品番号16;Strawberry Field。


ストックポートのタウン・ホール(市庁舎)の裏手の静かな場所に、ストロベリー・ストゥーディオス Strawberry Studios (活動は1968年~1993年)という、イギリスのロック・ミュージック史上重要な録音スタジオだった建物があるのです。

経営者がいつかビートルズの曲を録音することを目標に、ビートルズの曲の一つ、Strawberry Fields Forever から名付けたそうです。

車でよく前を通ります。
修復後、2017年に博物館としてオープンして以来、ストックポートで現在一番人気の観光スポットだということなのですが、寄ってみようみようと思いつつ、実現していません。

常連利用有名アーティストのリスト。めんどくさいからコピー&ペーストしました!(一部)
Joy Division, Neil Sedaka, Barclay James Harvest, the Smiths, the Stone Roses, Paul McCartney and Cliff Richard.....

ビートルズの録音をすることはなかったのですが、旧メンバーのポール・マッカートニーの録音は果たせたようです。

で、イチゴ肌のカエル。


デザイン的には優れています。
子供ウケしそうなイチゴ肌カエルを、子供が興味を持つとも思えない史跡録音スタジオの前ではなく、現在観光資源としてプロモート中の ショッピングエリアから間近い Old Town の、グレート・アンダー・バンク Great underbank に置くのも気が利いています。

背景は 16世紀の商館、アンダーバンク・ホール Underbank Hall
現在は、ナットウェスト銀行 NatWest Bank のストックポート支店です。


去年ストックポート日報でもしつこくレポートしたマンチェスターのパブリックアート・イベント、ビー・イン・ザ・シティ Bee in the City 、ご記憶でしょうか。
リンクを貼りました。ぜひ見てください!☟☟

マンチェスター中、個性的なはたらきバチでいっぱい!親しみやすい屋外アートイベント


まだまだあるハチのアートがマンチェスターを占領!今回は背景の建物とともに、シティーセンターのミニ観光案内


しつこく続くハチのアートの市民イベント、マンチェスターミニ観光案内つき;その2


載せ忘れたハチの写真を遅れて公開、中央図書館と市庁舎、マンチェスターの文化遺産の周辺


地元ストックポートの盛り上げイベントに関してけっこう皮肉な書き方をしてしまいました。

確かに全国的に話題になった上記のビー・イン・ザ・シティに比べると、アートの質も、スポンサー企業や団体の規模や知名度もかなりしょぼいのは事実です。
第一、参加アートの数も16体と、お茶休憩をいれても2時間以内でらくに回れる規模です。(beeは101体)

それでも!
マンチェスターのbee企画はかなり広範囲の公募で選ばれた作品のようですがこのカエル出品者や協賛企業はストックポート地元ベースが基本です。
プロの作家ではない学校や地域の制作による出品もあります。

地域に根差したプロジェクトなのです!!

作品番号13;Midas


タウンセンターのちょっとはずれ、大駐車場を併設したショッピングセンター、ピール・センター Peel Centre にあります。

日曜日には、家族連れがガイドマップを手に嬉々としてカエルめぐりをしていました。
カエルを見つけた喜びで咆哮をあげながらカエルに突進していった小さい子供を必死に止めるお母さんを見ました。

カエルに抱き着いた子供を嬉しそうに写真に撮るお母さん、おじいちゃんおばあちゃんもたくさんいました。

このプロジェクト、どうやら市民に愛されているようです。ストックポート市民としてはうれしいです!



上の写真のお母さんは子供たちに指図をして次々と配置を変えて激写していました。

ところで、この金ぴかカエル「ミダス」、シンプルで私が気に入った筆頭です。
制作に余り手がかかってなさそうです。たぶんスプレーペイントでしょ、着色したの?

ガイドマップの解説には作者名もスポンサー名も記載されていません。

ミダスというのは、手に触れたものを何でも黄金に変えてしまうギリシャ神話のミダス王のことです。

「躍進する産業都市、ストックポートに資本、技術投資をしませんか。Midas touch (濡れ手に粟、一攫千金のような慣用表現)が実現できますよ」というようなナマグサイ作品解説が載っていました。

....だからこれ、ほんとに市民に愛されるアートプロジェクトかって言ってるの?!

いい忘れましたが、カエルの頭にちょこんと帽子が載っているのは、ストックポートが「帽子の町」だからなのです。

ストックポートは1950年代まで、紳士がかぶる丸くて堅いフェルトのボーラー・ハット製造の世界的な中心地だったのです。
どうせならシルク・ハットではなく、ボーラー・ハットをかぶせればよかったのに!







コメント (3)
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