注目度が高いサセックス公(プリンス・ハリー)Prince Harry, Duke of Sussex の自伝、「スペア Spare」が出版されてちょうど一週間です。
発売日に、ストックポートのタウンセンターで通りかかった書店、ウォーターストーンズ Waterstones のあまりぱっとしないウィンドウ・ディスプレイです。
余談ですが、英国には個人経営の書店が見当たりません。たしかに美術書、児童書、コミック等々の専門性の高い個人書店はあるのですが。
大規模展開のチェーン書店、それもこのウォーターストーンズばかり見かけます。ほかにはやはり大手チェーンの、雑誌、新聞と話題の本や実用書ばかり扱っているようなイメージの、文具屋でもあるWHスミス WH.Smith 。
発売開始が1月10日の午前零時だったため、多くのウォーターストーンズではその日に限って終夜営業をしたようです。
その日の朝のテレビニュースには午前零時の時報とともに覆いが外された本の山から一冊取ってレジに向かう一番乗りの客と嬉しそうな報道陣が詰めかけて景気のよさそうな映像が映っていました。
そう言えば、ハリーポッター本の新刊書が出た時にも、毎回ホグワーツの制服を着た大人のファンが午前零時に書店で買ったばかりの本を手に記念写真を撮っていましたっけ。
どこのニュースでも今回、ハリー・ポッターとプリンス・ハリーは「英国の出版史上に残る二人のハリー」と報道していました。
下の2枚の写真は先週、金曜日に行ったマンチェスターのWHスミス...一層ショボいディスプレイです。
ストックポートのウォーターストーンズで売り場の整理をしていた男性の店員に「このお店も深夜に開けたの?」と聞いてみました。「まさか!予約なしでも買えますよ,一冊いかが」とすすめられてしまいました。お断りした後で気になったことを聞いてみました。
「なんで発売初日から半額なの?」...答えは「大量に刷ってるから。薄利多売です、売れてますよ!」...と言っている間にも若い人たちのグループがスマートフォンの予約画面を見せながらハリーの本を買っていきました。
店員は予約を確認して取り置きしていた本を渡していましたが、もちろん予約なしでフラッと入って来て、レジ前のテーブルにずらーっと並んでいるのを手に取って買うことも可能です。...って、予約してまで買う人が本当にいるのか?(目の前にいた!)
それに、仲間内の1人が買ったなら貸してもらって回し読みしてはダメなのか...?半額でも14ポンド(2、192円)は高い!です。定価の28ポンドで販売しているところは本当にあるのか?
もしかして、お母さんへのプレゼントだったりして...後述しますが、ハリーの母、ダイアナ妃を知る世代のハリーに対する思い入れはいくぶん深いものがあるようです。
予想通りのすごい売れ行きだそうです。
プリンス・ハリーってそんなに注目度が高かったかしら?
マンチェスターのウォーターストーンズのウィンドウディスプレイです。
著者のハリー本人が宣伝のために朗読した「従軍中にアフガニスタンで敵を25人殺した」下りや、うっかり世界解禁前に販売されちゃったスペイン語版からリークされた、王室メンバーとのドロドロした確執(多数)、童貞を失った経緯、違法ドラッグを常用した十代、ド顰蹙のナチスの軍服を着て仮装パーティに出席したいきさつ(兄がわるい)、兄のプリンス・ウィリアムに床にはり倒された一件、父(国王チャールズ)の理不尽な説教...など、センセーショナルな内容はすでに連日のニュースで知られつくしています
他にもギョッとするようなことが何か書いてあるのかな?いえ、多分もうないはずです。
発売解禁と同時に購入した人たちの多くはインタビューされて「さんざんニュースで聞かされたこの本の内容を自分で読んで確かめたい」と言っていました。
14ポンド払って本を買って味わうべきは「文学性」?ハリーの初自伝出版です!文章力も注目です...って、いやいや、もちろんゴーストライターが存在するのは誰もが知るところですが...やっぱりヘンです。この出版企画。
ゴーストライターは、本人の名前で何冊もノンフィクションを出版していますし、自身の複雑な家庭を描いた自伝が映画化もされているというアメリカの有名なジャーナリストです。ハリーの自伝を執筆したのも公言しているようですし...。そんじょそこらの売れないライターじゃなく、一流のジャーナリストがハリーの名前で執筆!がセールスポイントでもあるのか?だったら「自叙伝」であることを強調しすぎなのはおかしいような?
ライターがアメリカ人なのはなぜ?ハリーの話すイギリス王室風の英語がちゃんと反映されているのか...いるでしょうね、もちろん。
題名の Spare は日本語でもおなじみの「予備の」というような意味だそうです。
将来は王位につく兄のウィリアム王子の「スペア」であることを自覚した一家のよけいモノみたいに遇された王室の末っ子の自我の物語...なようです。
母(ダイアナ妃)を亡くし家族に愛されない少年時代を送り大好きな軍人のキャリアも家庭の都合で手放さなければならず、恋愛結婚した妻もマスメディアからこき下ろされて...同情、共感する余地が十分ある境遇のハリーなのですが...
話題のネットフリックスのドキュメンタリーに続いて「恥ずかしくないのか、ハリー?」な内容なのは間違いないようです。いえ、私は読んでいませんが!(ドキュメンタリーはストリーミング開始の日と翌日に全エピソードを見ました!)
「感動した」という書評も見つけました。どこがどう感動させるのかはその書評を読む前からわかっていた気がします。
13歳で最愛の母をいたましい事故で亡くし、全世界に中継された葬儀の生中継で棺の後をゆっくりと歩む少年ハリーのけなげな姿が目に焼き付いている私たち世代を「グッと来させる」ポイントは充分抑えているだろうなと予測していました。
これは...読まなくては!
絶対に14ポンド払って本を買うことなし読んでみるつもりです!買った人を探して貸してもらう、チャリティショップに寄付されたものを探す、図書館にも問い合わせる(新刊のハリーポッター本のように半年先まで予約いっぱいかもしれません)など手を尽くしてみるつもりです。(私もミーハーなことを自覚しています)
読んだら感想を書きます。
...出版社からハリーに支払われた契約金が(推定)1700万ポンド!(大半はアフリカのHIV基金に寄付するそうですが)でも目的はお金だけではないのでしょうね。一流のライターと大手出版社のバックアップで言いたいことが言えるチャンスなのです!自分の言い分に世界中の注目がこれだけ集まれば有頂天になるのもわかります、が...身内をさんざんこき下ろして感動のストーリーにしあげる感性が英国民の大半のそしりの対象になっていることを本人は覚悟していたのでしょうか。...読まなきゃ!
印税はまた別にハリーの懐に入るはずです。意地でも買ってやるものですか。