先週の木曜日から週末の日曜日にかけて、イングランド南東部の美しく、古く、そしてびっくりするほど小さい街、ロチェスター Rochester に行ってきました。
ロチェスター行きの目的は夫の姪の結婚式に参列するためです。
3泊したホテルはメドウェイ河 River Medwey の川岸にあります。
ロチェスターは対岸の、ずうっと左側です。
川岸を少し歩いて川から離れ、住宅街の中を40分ほどロチェスターの町まで歩きました。
名物建築らしいロチェスター橋 Rochester Bridge にはライオンや雄ヒツジの頭部など物々しい紋章飾りでこてこてと飾られ、いかにも古い街に入る期待を盛り上げる堂々とした作りなのですが、意外にも新しく1909年の建造でした。
川沿いの古城と尖塔のある大聖堂のシルエットが向こう岸に、見えています
渡り切ったこちら側は、もうロチェスター。
下調べをせず、行ってみたら幅の狭いハイ・ストリート High Street (目抜き通り) の両側に、建築様式や年代がバラバラで統一感の全くない古い建物がぎっちりとたて込む古い建物好きの私には目もくらむような光景が眼前に展開していました。眼福。
...といっても、見てまわるところは素晴らしい街並みのこのハイ・ストリートと、(川を渡ったロチェスター・ブリッジ Rochester Bridge を背にして)ハイストリートの右がわに位置する、古城 Rochester Castle と、大聖堂 Rochester Cathedral ぐらいでしょうか。
どちらも規模が小さくて、町を見下ろす小高い丘の上や放牧地に囲まれたヨーロッパの古い街らしいセッティングではなく、たて込んだ町の中にあるのがけっこう意外です。
ハイストリートというだけあって、両側はすべて商店や飲食店でした。観光地の目抜き通りにふさわしい景観の美しい商店街は1kmほどつづき、その先の交通量の多い道路と交わるあたりからはあまりぱっとしない普通の通りが始まっていました。
とてもたくさんあったチャリティ・ショップ以外はほぼすべてが個人経営の商店でした。アンティーク・ショップ、カフェ、パブ、レストランに、地元の人が利用する食料品店や、手芸材料店がありました。
お土産物屋さんの類がそう言えば、ありませんでした。
土産物を物色したいのであれば、ギルド・ホール・ミュージアム The Guildhall Museum と、ツーリスト・インフォメーション Visiter Information Center にこの地のゆかりの偉人である小説家、チャールズ・ディケンズの肖像入りのグッズなどが手に入ります。どちらもハイストリートの目につく建築物です。
近隣で生まれ育ったディケンズゆかりの建物がいくつも残っています。
作品の舞台としてインスピレーションを与えた、1590年にたてられたイーストゲート・ハウス Eastgate House (☟)はディケンズ関係の博物館になっています。
私はディケンズの有名な作品に限っていくつか日本語訳で読んでいます。
特にストーリー仕立てがしっかりしていて共感を持った「大いなる遺産 Great Expectations」に登場する、主人公ピップの自称後見人のパンブルチェックさんの(というふれこみの)店がありました。17世紀の白黒ハーフチェンバーのとても興味深い建物だったのですが、写真を(なぜか!)撮りませんでした。
ハイストリートの右側にはやはり、ミス・ハビシャムとエステラが住んでいた「サティス館」のイメージの元になった Restration House という邸宅もあります。外から見てみるのを忘れました!写真を見るとレンガ造りの堂々としたエリザベス朝建築で、ケバケバと豪華で薄気味悪いサティス館とはイメージが違う!...「大いなる遺産」を読んでいない方、ごめんなさい。
Great Expectations (大いなる遺産)の苦しいシャレの屋号(☟)。
他にもディケンズ作品がらみの店名をいくつか見かけました。
イーストゲイト・ハウスの中庭にどこかから移築されてきた、ディケンズが組み立てキットを取り寄せてたてさせたというスイスの牧歌的な山小屋 Swiss Chalait です。
あら、まあ、私が撮った大聖堂の外観写真はこれだけです。
今回は、観光資料になりそうなめぼしい建物の写真をあまりとりませんでした。
こんなに小さい街ですのに大聖堂があるために中世いらい800年以上、堂々と「シティCity 」をなのってきました。
英国では「シティ」という称号は通例、大聖堂を有する町のみに与えられます。町の規模とは関係ありません。
以前、発刊直後のストックポート日報 にダラダラと長い連載記事をのせたイーリー Ely や、私が1年間住んだこともある古都、ウィンチェスター Winchester も町の規模はストックポートなんかよりもずうっと小さいのにも関わらず、「シティ・オブ・イーリー City of Ely」 、「シティ・オブ・ウィンチェスター City of Wichester 」などと威風堂々たる名前で呼ばれるのは、いずれも大聖堂があるためなのです。
ちなみに大聖堂のないわが町、ストックポートはおそらく郡か何かに相当する、「バロウ・オブ・ストックポート Borough of Stockport」といいます。
そしてこの、イーリーよりもずっとずっと小さいロチェスターですが...残念、1998年に近隣の町と統合され行政区分が改められた際に、「シティ・オブ...」の称号は失って、ただの「タウン」になってしまったそうです。
そうは言っても、地元の人たち気持ちの上ではまだやっぱり「シティ」なんでしょうね、バス停の表示や交通標識には「シティ・センター行き」とか「シティ・センターまで何マイル」と書かれていました。
英国国教会の総本山、国際的な観光地でもあるカンタベリー大聖堂 Cantubery Cathedral までたったの50kmちょっと、中世の頃にはカンタベリー巡礼の途中のありがたい立ち寄りスポットだったようです。
小ぢんまりした大聖堂は驚きの12世紀、ノルマン建築でした。もちろん、入ってみました(入場無料の宗教施設です)。
同じくノルマン時代のほぼ廃墟の古城は、少し時間も押していましたし、コートを着ないで出てきた暑がりの私もさすがに午後の夕暮れ前は肌寒く感じ見学を見送りました。
ハイストリートの左側に位置する、駅前広場からタクシーを拾ってホテルに帰りました。
タクシー乗り場から、夕暮れの風景を撮りました。
ハイストリートを裏側から見たところです。
大聖堂など、もうちょっとロチェスターについて書くことがありそうです。