文明のターンテーブルThe Turntable of Civilization

日本の時間、世界の時間。
The time of Japan, the time of the world

中国主導の供給網に他国を依存させ、中華世界を創るという戦略に喜んで従う国や企業などあるものか。

2023年02月07日 11時09分42秒 | 全般

以下は昨日の産経新聞に掲載された櫻井よしこさんの定期コラムからである。
本論文も彼女が最澄が定義した国宝、至上の国宝である事を証明している。
見出し以外の文中強調と*以下の文章は私。
日中関係は相互主義で
「戦狼外交官」として名をはせた中国外務省報道官の趙立堅氏が今年1月上旬に左遷された。
同月29日、中国大使館は日本国民への中国一般ビザ発給再開をひっそりと告知した。
中国人渡航者に、新型コロナウイルス感染症検査を導入するなど対応を厳格化した日本への対抗措置が日本人へのビザ発給停止だった。 
2月に入り、中国はオーストラリア産ワインや大麦の輸入規制撤廃に向けた協議を始めると表明。
1月には豪州産石炭の輸入も再開された。
新型コロナの発生地調査を主張した豪州への報復が中国による豪州産ワインや石炭の輸入禁止だった。
1月17日、スイスのシンクタンク「世界経済フォーラム(wEF)」の年次総会(ダボス会議)で、劉鶴副首相は「中国は計画経済に絶対に戻らない」と自由経済を強く支持した。
一連の兆しから中国が「戦狼外交」から「微笑外交」に路線変更したとの見方が国際社会に広がった。
果たしてそうか。 
中国が諸外国との関係改善に乗り出したのは、彼らが中国共産党の価値観の異常を反省したからではなく、二進(にっち)も三進(さっち)もいかなくなった経済が最大の理由であろう。 
劉氏は2022年の経済成長率を3%と語ったが、これを信ずる専門家はまれでありマイナス成長だったとする分析もある。
若者の失業率を17%とする統計もあるが実態は30~40%との見方もある。
中国の総人口は昨年から減少し始めたが、生産年齢人口は10年前から減少に転じた。
中国が国内総生産(GDP)で米国を追い抜く可能性は既に否定され、国民生活を豊かにするという中国共産党の存在意義が真っ向から問われている。 
ロシア支援と異形の軍拡、人権蹂躙の中国に対する国際社会の印象は極めて悪い。
多くの国で中国への悪印象は最高レベルだと分析された采調査機関「ピュー・リサーチセンター」、22年6月)。
世界最高水準の製造業を育て、中国主導の供給網に他国を依存させ、中華世界を創るという戦略に喜んで従う国や企業などあるものか。 
中国を敬遠するのは外国資本だけではない。
中国人による資本流出も激しい。
22年4月以降、中国の外貨準備は前年同期比で1千億㌦(約13兆円)規模の減少だ。
景気後退は習近平国家主席肝煎りの大計画も頓挫させかねない。
日米欧に頼らず中国主導の半導体供給網を築くため最大1兆元(約19兆円)の補助金を注ぎ込むはずが財源不足で「休止へ」と報じられたのだ。 
日米欧の投資を呼び込みたい、背に腹は代えられないという状況下の中国の微笑は、急場しのぎの媚態であろう。
台湾征服の野望、尖閣諸島(沖縄県石垣市)周辺への侵入、やみくもの軍拡路線が不変なのも当然だ。
実は中国の真の狙いは昨年11月の米中首脳会談から見てとれる。 
昨年11月14日、米中首脳餃談を受けて会見した王毅国務委員兼外相(当時)は、首脳会談が(同時通訳で)3時間以上も続いたと披露し、「両国は共に指導原則を確立することで合意した」と語った。
指導原則(guiding princiles)の意味を会見から読みとれぱ「米中両国が歴史および全世界と人類に責任を持ち、方向性を間違えず、減速せず、衝突を減らし、正しい道を歩むこと」となる。 これはかつて中国が米国のオバマ政権に持ちかけた「新型大国関係」の焼き直しではないか。
中国はまず、米国と共同で世界を統治し、将来は米国を凌駕(りょうが)するという戦略だ。
その先に習近平国家主席が掲げる「人類運命共同体」がある。
「地球発展構想」や「地球安全保障提想」もあり、世界を中華至上主義に染めるということだ。

*この「人類運命共同体」「地球発展構想」「地球安全保障提想」が、そっくり、そのままクラウス・シュワブのダボス会議と重なるのは単なる偶然では決してないはずだ*

中国の劉鶴副首相は1日のダボス会議で、民間企業を後押しすると語ったが、習氏の下では国営企業がさらに力をつけている。
中国電子商取引(EC)最大手アリババグループの創業者、馬雲(ジャック・マー)氏は、電子決済サービス「アリペイ」を運営するアント・グループの支配権を手放し、日本などの外国でひっそりと暮らしている。
中国人の発する言葉は現実と合致しないのが常である。 
ただ、中国14億人の中に、習氏の異常な支配欲に異を唱える人は少なくないはずだ。
国際法を順守し、人権・人道を守り、各民族の独自性を尊重するまともな国家像を信奉する中国人は多いはずだ。
彼らはしかし、いま、息をひそめている。
だからこそ、日本が発言すべきなのだ。
米国の陰に隠れるのでなく、自らの存在と哲学を明確に打ち出し、中国共産党に価値観の戦いを仕掛けるのだ。 
対日関係も含めて世界との関係改善を進め、実利を得ようとする中国は、利害計算をすればするほど日本を無視できない。
たとえ中国が応じなくとも日本は揺らぐ必要はない。
こちらの原則を貫くのが最善の戦い方だ。
中国に言うべきことは、第一にわが国は中国の不条理を受け入れないという点。
第二に2国閧関係においてはすべて相互主義を基本とする、という点だ。 
現在の日中関係は中国の主張が一方的にまかり通る不条理さで満ちている。
たとえば、中国人は日本の国土を次々に買収するが、日本人は中国の土地は全く買えない。
中国への国土売却は文字どおり中国に国を売ることだ。
政府は深刻に受けとめ、相互主義を打ち立てる必要がある。 
次に“スパイ事件”だ。
日中間に問題が発生すると中国は罪もない日本人をスパイ容疑のぬれぎぬで拘束し、実刑に処する。
反対に、全員ではないが、中国人留学生は日本の国費で大学院などで学び、スパイ行為を働き知的財産を盗んでいく。
日本で暗躍する中国人スパイも少なくない。
中国に不当に拘束された日本人を守るための法律も、日本で暗躍するスパイを取り締まる法律もわが国にはない。
他の民主主義国と同じように強い措置をとるための法整備が必要だ。
他の分野における不公平な現実は目に余る。
相互主義によって公正な関係を築くことが大事だ。 
中国が米国に共同指導原則の確立を持ちかけているいま、日本が自らの哲学と国家観を米中に示すことが大事である。
中国の仕掛けの中で埋没してはならないのだ。



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