文明のターンテーブルThe Turntable of Civilization

日本の時間、世界の時間。
The time of Japan, the time of the world

農業のみならず諸文化の導入をも図った。それらに日本人は大きな貢献をしている…すなわち、近代的な台湾は、日本が創(つく)った

2022年07月17日 09時51分16秒 | 全般
以下は今日の産経新聞に掲載された大阪大学名誉教授・加地伸行氏の定期連載コラムからである。
ロシアのウクライナ侵攻が膠着(こうちゃく)しつつある。
そうなると、しぜん周辺諸国は厭戦(えんせん)気分となる。
まして遠国の者は無関心となり、戦争否定の気持ちが勢いを失ってゆく。
となると、中国に利己的動きが出てきても不思議ではない。
すなわち台湾侵攻である。
そのとき、日本はどうするのか。どうすべきなのか。
今回のロシア・ウクライナ問題から生まれた重大問題のひとつは、ロシアの妨害によってウクライナ産小麦という主食材がアフリカなどへ輸送が困難になったことである。
この問題の根源にあるものは、欧米列強のかつての植民地政策である。
すなわち、植民地化したアフリカ諸地域に作らせた農産物は、サトウキビ、タバコ、トウモロコシ(動物飼料用)等(など)が中心であり、それらは欧米人にとって価値ある商品原料であった。
そのため、主食供給としての農業の発展は十分でなかった。
その影響として、今回の小麦不足がある。
しかし、日本の台湾統治の特色は、主食としてのコメの生産増強であり、蓬萊米(ほうらいまい)と称する名品を生産した。
そのための灌漑(かんがい)事業を行い、その設備は今も生きている。
いや、農業のみならず諸文化の導入をも図った。
それらに日本人は大きな貢献をしている。
あえて言えば、欧米列強のように植民地から必要な生産物を収奪したのではなくて、同一国として育成していったのである。
諸方面におけるその貢献は、喜多由浩著『台湾の日本人』(産経新聞出版刊)に詳述されている。
すなわち、近代的な台湾は、日本が創(つく)ったのである。
その台湾へ中国が侵攻しようと狙っている。
どのような侵攻であろうか。ロシアのウクライナ侵攻のようにか。すなわち爆撃を加えに加えてか。映像が示すように破壊された建物ほど悲惨な姿はない。それを正義と強弁しようとするのか。

かつて「国共合作」ということがあった。
対日本としての国民党(内戦後、台湾へ)と共産党(現大陸)との共同行動という政治的妥協であった。
その合作を何度か行ったが、すべて失敗した。
対日本というバリアーを越えられなかったからだ。

しかし現在では、大陸と台湾という、それぞれからの立場であるので、将来的に両者は、さまざまな友好関係を持つことが可能であろう。

ただし、現況のままで百年待とう。
それぐらいの年月は、長い中国歴史から見れば、なんでもない。

そしてその間、美点を互いに尊重して良(よ)いものは取り入れ、改めるべきものは改めるという<大人>の関係を続けてゆくならば、それこそ真の強国となることができるであろう。

そうなって初めて、その発言に世界的重みがつくことであろう。

『老子』七十六章に曰(いわ)く、兵(へい)(軍事力)強ければ勝たず。木(き)強ければ(かえって)折る、と。(かじ のぶゆき)






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