「米中・沖縄決戦の衝撃」米シンクタンクが《中国が開戦と同時に沖縄を徹底的に攻撃する可能性》を指摘
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太平洋戦争の悲劇から、まもなく80年。
美しい南の海と島々が再び戦火に見舞われようとしている。
米国の安全保障の専門家たちが描くシナリオをもとに、2年後に勃発する「有事」の詳細を予測する。
流出した内部メモ
「台湾が米中間の戦争の火種になる可能性は否定しようがありません。そして、台湾をめぐって米中が衝突した場合、日本も戦争に引きずり込まれる可能性は非常に高いでしょう」(『危機の地政学』などの著書がある政治学者のイアン・ブレマー氏)
米国をはじめとしたNATO(北大西洋条約機構)加盟国がウクライナ情勢に目を奪われる一方で、台湾危機がじりじりと迫りつつある。
そんななか、米空軍大将、マイク・ミニハンの署名が入った内部メモがSNS上に流出し、世界の国防関係者のあいだで緊張が走った。
メモには「自分が間違っていることを願うが、台湾をめぐって'25年に米国は中国と戦うことになるだろう」という記述があり、射撃訓練の準備を急ぐよう指示していた。
文面からは米軍のトップが抱いている危機感がリアルに伝わってくる。
1月28日、米国防総省はメモの存在を本物と認めつつ、「内容は中国に対する国防総省の公式な見解ではない」と取り繕った。
なぜ「開戦」が'25年なのか。
それまでに米、中、台湾をめぐるパワーバランスが大きく動く可能性が高いからだ。選挙である。
選挙で複雑化する台湾情勢
「台湾では'24年5月に対中強硬派の蔡英文が任期を終えるため、総統選が行われます。親中路線で統一地方選に大勝した最大野党・国民党の侯友宜は有力な総統候補ですが、『大国の駒にならない』と発言しています。これはウクライナの二の舞にはならないという意味ですが、中国に対する牽制であると同時に米国に向けたメッセージでもあり、先を見通すのが難しい。中国はまず、この総統選の結果を待ちつつ台湾侵略のシナリオを練るはずです」(中国に詳しいジャーナリストの福島香織氏)
さらに同年11月には、米大統領選挙がある。
現時点の予想では、海外紛争に慎重姿勢を貫くバイデン大統領と、対中強硬派のトランプ前大統領が再び対決する構図になりそうだ。
「台湾と米国のトップが誰になるかによって、習近平の出方は変わってきますが、'22年10月の共産党大会で習近平は『祖国の完全統一は必ず実現しなければならない』と発言しています。それができなければ、'27年に迎える4期目の再選を目指す上で逆風となる。ただ、サイバー攻撃によるインフラ破壊や世論工作など緻密な事前準備をしてからでないと台湾制圧は難しい。少なくとも'25年中に開戦しないと'27年までに成果を出すことはできません」
(『台湾有事 米中衝突というリスク』の著書があるジャーナリストの清水克彦氏)
つまり有事は、遅くとも2年後に迫っている。
そして、国民の大半はまだ実感していないが、日本も戦争の当事者となる可能性は限りなく高い。
決戦の舞台は沖縄だ。
米国は日本の参戦前提
1月9日、米国シンクタンクの戦略国際問題研究所(以下、CSIS)が衝撃のシミュレーションを発表した。
米軍元幹部や軍事専門家が、中国軍による台湾侵攻が起きたと仮定した机上演習を行い、24通りのシナリオを用意して戦況を緻密に予想分析した。
現時点ではシナリオのほとんどで、中国の侵攻は失敗し、米軍が勝利すると予測されている。
しかし、その結果を無邪気に喜ぶことはできない。
米国の勝利、そして台湾防衛は「日本の関与」「日本国内の米軍基地の使用」などが前提条件とされている。
つまり、自衛隊の「参戦」なくしては、勝利と台湾の独立は望めないと予想されているわけだ。
習近平はじめ中国側はロシアのウクライナ侵攻における失敗をつぶさに分析し、台湾侵攻で同じ轍を踏まないように準備している。
ウクライナはNATO加盟国からのふんだんな軍事支援を受け、ロシアは当初の予想をはるかに上回る打撃を受けた。
中国が同じ失敗を台湾でくり返さないためには、最初に米国から台湾への支援ルートを断つ必要がある。
そのルート上にある最重要拠点が沖縄である。
CSISのレポートは、中国軍が開戦と同時に沖縄の基地を徹底的に攻撃する可能性を指摘している。
「週刊現代」2023年2月11・18日号より