哲学チャンネル より 正義とは何か、善とは何か。【正義と善シリーズ#1】(これからの「正義」の話をしよう)を紹介します。
ここから https://www.youtube.com/watch?v=NYMk1Sneun4
動画の書き起こし版です。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー こんにちは。哲学チャンネルです。 今回から『正義と善』シリーズと題して 形而上学的な『正義と善』と政治的な『正義と善』について 触れていきたいと思っています。 とはいえ、このテーマに関しては多くの哲学者が残した 様々な意見があるため 今回はマイケル・サンデルの【これからの「正義」の話をしよう】 を下敷きにした視点で解説していこうと考えています。 フロムシリーズと同じく、全10回ほどの動画になると思われます。 お付き合いいただけると幸いです。 初回となる今回は、マイケル・サンデルの紹介と、 これから解説する流れをまとめます。 ぜひ最後までご視聴ください。 それでは、本編にまいります。 マイケル・サンデルはアメリカの哲学者です。 特に政治哲学の面で活躍をされています。 ハーバード大学の教授を長年務めており 2010年に放映されたNHKの番組 【ハーバード白熱教室】でその存在を知った方も 多いのではないでしょうか? 今回下敷きにする【これからの「正義」の話をしよう】以外にも 【自由主義と正義の限界】【それをお金で買いますか】など 彼の著作は広く世間に受け入れられています。 サンデルの仕事を簡単に言い表すと 『それまでアメリカの中心的政治主義であったリベラリズムを批判し、 コミュニタリアニズム(共同体主義)や共和主義の重要性を主張した』 と表現できるでしょう。 【これからの「正義」の話をしよう】においては 『正義と善』に関わる思想を大きく6つ提示しています。 まず、政治的にも関わりが大きい4つの思想として ・功利主義(ベンサムなど)・リバタリアニズム(ロスバードなど) ・リベラリズム(ロールズなど)・コミュニタリアニズム(サンデルなど) が挙げられます。 そこに追加してカントの道徳論、アリストテレスの目的因について 言及されています。 サンデル自身がコミュニタリアンであるが故に その他の思想を多少批判的に捉えているものの 比較的平等に各思想を解説し それぞれの視点で『正義と善』をどう捉えているのか? という考察がなされています。
本シリーズにおいてもこの構成に倣って各思想を解説するとともに 『正義と善』をどう解釈できるのかに迫っていきたいと考えています。 例えば【これからの「正義」の話をしよう】ではこのようなエピソードが提示されています。 1884年夏。 4人のイギリス人船乗りが、陸から1800キロ離れた沖合で遭難しました。 彼らは沈没したミニョネット号から救命ボートで脱出し、 その後何日も南大西洋を漂流していたのです。 持っている食料は缶詰2個だけで、飲み水はありませんでした。 乗組員は船長のダドリー。一等航海士のスティーブンズ。 甲板員のブルック。そして雑用係のパーカー。 後に新聞では彼らのことを『いずれも優れた人格の持ち主』だと評しています。
漂流して12日目。 雑用係のパーカーは著しく体調を崩し 救命ボートの隅で横になっていました。 彼はまだ17歳。 孤児だった彼は「一人前の大人になるために」まわりの反対を押し切って 今回の航海に参加していました。 パーカーは他の者の忠告を聞き入れずに海水を飲んでしまいました。 もう死にかけているようにも見えたといいます。 漂流して19日目。 船長のダドリーはくじ引きで誰か死ぬべき者を決めようと提案しました。 その目的は当然食料です。 しかし、ブルックがそれに反対したことで その日にくじ引きが行われることはありませんでした。 翌日。 ダドリー船長はパーカーの頸動脈を折りたたみナイフで刺し、彼を殺しました。 仲間を食料にすることに断固反対していたブルックも このおぞましい恵みの分け前にあずかりました。 そして漂流24日目。 彼ら【三人】は一隻の船に救助されました。 その後、三人の裁判では謀殺罪が適応され死刑が宣告されます。 しかし、世論からは無罪との意見が多くあがったため 当時の国家元首であったヴィクトリア女王から特赦が与えられ 禁固6ヶ月に減刑されました。
【ミニョネット号事件】においての正義とはなんだったのでしょうか? 彼らの弁護士は、そのままでは全員死んでしまう可能性が高かったとし 三人を救うためには一人を殺すことが必要だったと主張しました。 まもなく死ぬに違いなかったパーカーを殺すことは 全体の利益のために合理的な判断だったとするのです。 一方で、仮にそうだったとしても道徳的に人殺しが許されるでしょうか? この事件においての『正しい』結末とはなんだったのでしょうか?
当たり前のことですが、おそらくこの議論に答えはないでしょう。 もし答えがあるのならば、今まさに起きている世界中の不幸は その答えによってその是非が判断できることになってしまいます。 しかし、政治や司法では答えがないものにも決定を求められます。 つまり暫定的な答えを用意しなければならない。 この暫定的な答えが『正義と善』に関するそれぞれの思想です。 【これからの「正義」の話をしよう】では、 いくつもの実例を通して、それに対する様々な思想の解釈を検討します。 答えがないものだからこそ、各々がそれについて考える必要性があると感じます。 本シリーズを通じて、そんな答えのない問いに 思考を巡らせていただけると嬉しいです。
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